なぜ? 任天堂に日本郵船――投資の神様・バフェットが否定的な「株式分割」に大企業が乗り出す理由:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/4 ページ)
任天堂や日本郵船など、大企業で相次ぐ「株式分割」。投資家視点では、これまで手が出せなかった株がお手頃価格になる一方、企業にとってデメリットはないのか。そもそも、投資の神様・バフェットは株式分割に否定的とされるが……
ここ最近、「株式分割」に踏み切る企業が増えている。10月1日には1株当たりの値段が高い「値がさ株」の代表格であった任天堂が1株を10株へ分割した。同社の株価は従来1株当たり6万円程度で取引されていたため、通常の100株単位での売買を行おうとすると600万円の資金が必要であった。しかし、株数が10倍に増加したことにより1株当たりの価格は10分の1程度の価格となり、11月16日時点の終値が1株5815円、100株単位では58万円程度で任天堂の株主になれるようになった。
任天堂以外にも、2022年は東京海上ホールディングスや日本郵船、川崎汽船といった大企業を中心に多数の企業が株式分割を発表しており、明治ホールディングスも23年に株式分割を行うと既に発表している。これらの企業の多くは、株式分割の発表が市場にとってプラスであると判断されて株価を上げているが、今回はその背景とメリット・デメリットについて深掘りしていきたい。
「国策」と化した株式分割
足元で相次ぐ株式分割の立役者といえば、JPX(日本証券取引所グループ)だろう。JPXは東京証券取引所や大阪取引所といった金融商品取引所の持株会社で、「貯蓄から投資へ」という国民の資産形成についても積極的に施策を実施している企業である。
そんな同社は10月27日に「投資単位の引下げに係るご検討のお願い」という知らせを上場企業の代表各位に送付している。
具体的には、次のような内容となっている。
当取引所では、個人投資者が投資しやすい環境を整備すべく、上場会社の皆様に対して、投資単位として「5万円以上50万円未満」の水準が望まれる旨をお示しし、その水準への移行及び維持をお願いしてまいりました。多くの上場会社の皆様に投資単位の引下げに ご尽力いただいた結果、現在では、当取引所の上場会社のうち約95%の企業が、50万円未満の水準を維持しています。 一方で、依然として投資単位が高い水準に留まっている上場会社も一定数見受けられ、本年10月14日の金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」第21回会合においても、個人投資者の投資しやすい環境を整備するために、投資単位が高い水準のままにある上場会社に関して、 投資単位の引下げが図られる必要があるとの指摘がなされております。(東京証券取引所「投資単位の引下げに係るご検討のお願い」より抜粋)
キーワードは「5万円以上50万円未満」という投資単位だろう。投資単位とは、わが国の一般的な取引単位である1単元=100株当たりの投資金額を指す。そのため、東証や政府は上場企業の株価が500円から5000円以内に収まるように調整することで、個人投資家が株式を買いやすい環境を作るという狙いがあるようだ。
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