実は「横領・不正」に手を染めやすい部署 経理部とどこ?:ノルマへのプレッシャー(4/4 ページ)
「社内不正」と聞くと、「うちの会社ではそんな大それたことは起こるわけがない」と思いがちです。しかし実際には、社内不正の手口は多岐にわたり、小さな不正はどこの会社でも毎日のように起こっていると言っても過言ではありません。
【3】懲戒処分の検討
社内不正に関する事実確認の調査を十分に実施した結果、不正の証拠がそろい、いよいよ社員による不正が確定したということであれば、その社員への処分を検討する段階に入ります。
社員に対する処分には、主に、
- 会社での責任追及(懲戒処分)
- 法律上の責任追及(損害賠償請求や刑事告訴)
の2つがあります。
(1)会社での責任追及(懲戒処分)
会社での責任追及に関しては、懲戒処分することを検討することになりますが、種類としては、「戒告」「減給」「出勤停止」「降格」「退職勧奨」「懲戒解雇」などがあります。
いずれも、あらかじめ就業規則に規定されていることが前提となります。
戒告
社内不正をした社員に対して指導や警告をし、改善を求める処分です。懲戒処分で最も軽いものとなります。
減給
その名の通り、給料を減らす処分です。「どれだけ給料を減らしてもよい」と誤解している人もいますが、実際には1回の額は平均賃金の1日分の50%、減給合計額は賃金支払期の10%を超えてはならないと労働基準法で定められています。
出勤停止
勤務を一定期間禁止する処分です。出勤停止期間中は給料は支払われず、通常、勤続年数にも算入されません。一定期間、給料が支給されなくなるため、ある程度重い懲戒処分とされますので、弁護士に相談するなど慎重に決める必要があります。
降格
職位を下げる処分です。降格は将来的にも大きな影響を及ぼす可能性のある懲戒処分なので、かなり重い処分と考えるべきです。極めて慎重に判断することが求められます。
退職勧奨
退職を促し、同意してもらったうえで退職届を提出させる処分です。ただし、社内不正をした社員の場合、退職勧奨に従わなかった場合は次に述べる懲戒解雇の処分を検討していくことになると思いますので、処分の重さとしては懲戒解雇と同程度と考えてよいでしょう。
懲戒解雇
懲戒解雇は、懲戒処分のなかで最も重い処分です。横領や着服などの重大な犯罪的行為がなされた場合や、重大な経歴詐称をして経営陣の役職についていた場合などの深刻な不正に対して行われる処分です。
懲戒解雇をすることで、対象の社員は即刻職を失うことはもちろんですが、その後の再就職にも重大な影響を及ぼす可能性があります。他の懲戒処分よりもさらに慎重に判断をしなければいけませんし、法的にも有効性の高い証拠を多数集めておくことが必要となります。
懲戒処分は、再発防止に関しても効果が高いと思われます。
(2)法律上の責任追及(損害賠償請求や刑事告訴)
社内不正にもさまざまな種類がありますが、
- 多額の資金の横領や、製品の窃盗をされた場合
- 会社の誹謗中傷をSNSに拡散された場合
- 会社のPCの私的使用によって企業秘密に不正アクセスされた場合
など、会社が被る被害が甚大な場合は、法的措置を検討することも必要になってくるでしょう。
法的措置としては、民事訴訟をするか、刑事事件として訴えるかになります。
横領や窃盗などの場合は刑事事件としても訴えることが可能ですし、民事的にも損害賠償請求をすることが可能です。
また、SNSなどに会社の誹謗中傷を拡散された場合も、名誉毀損罪として訴えることができますし、損害賠償請求も可能です。
法的措置を検討する場合は、法律のプロである弁護士に相談しながら手続きを進めます。その際に必要となる不正行為の証拠収集については、調査会社等に依頼すると効率的です。
* * *
繰り返しになりますが、社内不正はどこの会社でも起こり得ます。大切なのは、「自分の会社でも社内不正は起こり得る」という認識をもつことと、実際に社内不正が起こったときに、焦らず適切な対応を取ることです。
普段から、弁護士や調査会社等と連携をとり、予防策に努めておくことが、会社を守っていくうえで重要だといえるでしょう。
著者:今野 裕幸(こんの・ひろゆき)
企業調査専門調査機関スプラッシュ 代表
探偵歴26年、著書2冊、年間2,000件の相談に対応。企業内に巻き起こる不正・横領・詐欺・誹謗中傷等の問題を解決に導く現役探偵・コンサルタント。
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