JTに丸井、オリックス 人気企業の株主優待“廃止ラッシュ”が止まらないワケ:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)
株主優待を廃止する企業が増えている。直近では、JTや丸井グループ、マルハニチロなどが廃止を発表した。そもそも株主優待は日本独自の制度ともされるが、なぜ、各社は廃止に踏み切ったのか。株主優待のメリット・デメリットとは。
JTの株価は、株主優待の廃止を発表した直後こそ下落したが、その後は配当利回りが向上することを好感して買いが入り、優待廃止を告知以降につけた底値から40%以上も株価が上昇している。JTではこれまで自社傘下であるテーブルマークの冷凍うどんやパックごはんを中心に、換金性は低いが個人投資家には人気の優待品を届けていた。大口の機関投資家にとって、換金性の低い優待は運用資産に組み入れられなかったことから、これを配当金に集約することで、大口の機関投資家が納得してJTの株式を購入できるようになったといえるのではないか。
不祥事が続いても株価が暴落しなかったマクドナルド
ここまでの事情を勘案すると、企業にとっては株主優待を廃止して配当に集約することが求められているようにも思えるが、株主優待のメリットにも注目しておきたい。例えば、「株価の下支え効果」は強力なメリットだ。
最も有名な例といえば、15年ごろ経営危機にひんした日本マクドナルドホールディングス(HD)の株価動向だろう。同社は、14年から15年にかけて、鶏肉の食品偽装や、ビニール片のような異物混入問題が相次いで報じられた。その結果、14年12月期の最終益は218億円の赤字と、通期としては11年ぶりの赤字に転落。翌15年12月期には上場来最大となる349億円の赤字を記録した。
しかしながら、この期間中に同社の株価はほとんど下がっていない。14年1月の始値が2685円だったのに対して、15年12月の終値は2620円で引けている。16年1月に発表された決算発表で一時は2215円まで値を下げる場面もあったが、その翌月には2600円台まで買い戻され、今では5000円程度で取引される株となっている。
同社を支えているのが「優待族」とよばれる個人投資家の存在だろう。日本マクドナルドHDは、22年現在で34万人近い株主が存在する。株主1人当たりの持株数は393.4株。この数字には大株主も含まれているため、多くの個人投資家が100〜300株程度の保有にとどめ、株価を気にせずに優待のハンバーガーを楽しむことを目的としている人の割合が高いと推認される。
1人当たりの保有数が小口であることや、優待目的で価格を気にしない株主が多いこと、そして株価が安くなると優待を狙う新規の優待族が参入すること、このような要素が日本マクドナルドHDの下値を盤石にしているものと考えられる。
関連記事
- 7割が「不満」 冬ボーナスの支給金額 3位「5万〜10万円」、2位「30万〜50万円」、1位は?
ヒューネルがボーナスに関する調査結果を発表した。最も多くの人が回答した金額帯はいくらだったのか? - なぜ? 任天堂に日本郵船――投資の神様・バフェットが否定的な「株式分割」に大企業が乗り出す理由
任天堂や日本郵船など、大企業で相次ぐ「株式分割」。投資家視点では、これまで手が出せなかった株がお手頃価格になる一方、企業にとってデメリットはないのか。そもそも、投資の神様・バフェットは株式分割に否定的とされるが…… - わずか1年で時価総額76兆円が消失のメタ 「脱・Facebook」の大きすぎた代償
メタバースへの投資などを理由に、Facebookから社名を変更したメタ社が、大きな苦境に立っている。株価は社名変更後のわずか1年で7割も暴落するなど、脱Facebookの代償はあまりにも大きかったようだ。 - 日本企業の課長職、貯蓄平均は「1550万円」 年収の平均は? 業務内容で大きな差 毎月のお小遣い額も明らかに
ビジネスコーチが「日本の課長」に関する調査を実施。年収や毎月のお小遣い、理想の上司/部下などを課長1000人に調査した結果が明らかになった。 - お金が見る見る溶けていく――投資初心者がハマる「レバレッジ投信」、2022年は最悪のリターンに?
「少ない資金で大きなリターンが得られる」――そうした触れ込みを基に、投資初心者を中心に人気を博していたレバレッジ投信だが、2022年に入って大きな逆風が吹いている。海外では業者への規制が進むが、日本ではまだ手ぬるいようで…… - 「住みたい街」5年連続トップの横浜 住民だけでなく企業からも人気を博し続ける納得の理由
横浜といえば、「住みたい街」ランキングで5年連続トップとなるなど、人気の街だ。一方で、企業とのコラボや撮影依頼も多く、企業からも人気を博している。いったいなぜ、これほどまでに横浜は人気なのだろうか。市の歴史や取り組みとともに解説する。 - 温泉宿のクチコミランキング 3位「伊香保温泉 ホテル木暮」、2位「効能溢れる癒しの湯治宿 玉川温泉」 1位は?
楽天トラベルが「お風呂のクチコミ評価が高い温泉宿ランキング」を発表した。クチコミを基に、1〜10位までをランク付けしている。その結果、3位には伊香保温泉、2位は玉川温泉の宿がランクイン。果たして1位はどこだったのか? - 「ジーユー以上、ユニクロ以下」の価格帯で勝負 FOREVER21、日本市場で“三度目の正直”となるためのカギは?
2023年、日本市場への再チャレンジを発表したFOREVER21。過去に二度の撤退を経験しながら、今回を“三度目の正直”とできるか。勝負する価格帯は、「ジーユー以上、ユニクロ以下」となり、激しい価格競争も想定される中、成功のカギはどこにあるのか。専門家が分析する。 - 都道府県別、人気の移住先ランキング 北海道、兵庫県を抑えた1位は?
移住・関係人口促進サービス「SMOUT」を運営するカヤックが、約4万人のユーザー動向から調査した人気の移住先ランキングを発表した。市区町村と都道府県別にランク付けしている。 - 初デートで「なし」なメニュー 3位「ギョーザ」、2位「ジビエ」、1位は? ファミレス容認派の割合も明らかに
ホットペッパーグルメ外食総研が初デートでの「あり」「なし」ランキングを発表した。SNSで話題になることも多い「ファミレス初デート」容認派の割合や、「あり」「なし」な店・メニューが明らかになった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.