「京成スカイライナー」がジレンマ 優先するのはスピードか停車駅増か:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)
11月26日のダイヤ改正で、スカイライナーのうち青砥駅停車列車が新鎌ヶ谷駅にも停車することになった。かつてスカイライナーの京成上野駅発車時刻は毎時00分、20分、40分だったが、青砥駅に停車するため2020年に一部の発車時刻が3分繰り上がった。しかし青砥駅停車は2つの意味で問題がある。
青砥駅・新鎌ヶ谷駅停車でスカイライナーの空席を埋める
スカイライナーを青砥駅に停める。もう1つの問題は所要時間の増加だ。特急列車の最大の魅力はスピードだ。所要時間を増やしたくない。なぜなら、乗客は「移動は無駄な時間」と思っているからだ。そこに至る考えは2年前にここで書いた。
「急行電車の混雑」「エスカレーター歩行」はなぜ生まれるか リニアの必要性と"移動"の意味(20年8月7日の本連載)
スピードアップは良いことばかり。ライバルの列車より速いほうが乗客を獲得できる。速く目的地を折り返してくれば、必要な車両数も少なくて済む。
乗客が求める特急の最大のサービスはスピード。次に乗り心地となるだろう。所要時間を短縮するためには、停車駅を減らしたい。理想としては始発駅で満席にしたい。もし空席があれば、その席は売り上げにならないからだ。列車の席は運行が終ったら売れない。空席は在庫にならずただ消えるだけ。丸損だ。
そこで空席を埋めるためにどうするか。特急料金を下げて需要を喚起する方法もある。しかし、それでは全列車の収益が下がる。そこで「一部の列車の停車駅を増やし、利用者の乗車機会を増やす」という考えが生まれる。スカイライナーの場合は青砥駅停車が有効だった。当初は早朝夜間の臨時列車として始まったけれど、それが日中にも拡大された。
実はこの時の青砥駅臨時停車では、京成上野発00分、20分、40分は維持されていた。早朝夜間は列車が少ないから20分サイクルに触れずに調整可能だったし、日中に拡大されたときもスカイライナーが減便されていたから、京成線内の列車時刻の変更で対応できた。ただし、11月26日のダイヤ改正はスカイライナーの全列車を復活させるから、厳密に20分サイクルを維持する必要がある。
それならいっそ、すべてのスカイライナーを青砥駅に停めてしまえば20分サイクルを維持できる。直通先の影響も最小限で済む。しかし、スカイライナーのイメージダウンは必至だ。もう「都心から成田空港までノンストップ」とはいえないし、「日暮里〜空港第2ビル間36分」という宣伝もできない。日暮里〜空港第2ビル間は39分になるし、40分になるかもしれない。遅いというイメージがつくと、ライバルJRの成田エクスブレスに客を奪われかねない。だからスカイライナーの最速列車は維持したい。
全列車の青砥駅停車はしない。その代わり、11月26日のダイヤ改正で青砥駅停車パターンのスカイライナーを新鎌ヶ谷駅にも停めた。新鎌ヶ谷駅当たりまで来ると20分サイクルダイヤでも余裕があるから停車駅増加は問題ない。
新鎌ヶ谷駅は成田スカイアクセスのうち、北総鉄道線の区間だ。いままで北総鉄道線内の全駅を通過したスカイライナーが新鎌ヶ谷に停まれば、沿線の人々にとって成田空港に行きやすくなるし、日暮里・上野と新鎌ヶ谷間の着席指定列車として快適な利用を促せる。いままで平日早朝に1本だけあった印旛日本医大駅発、千葉ニュータウン停車の「臨時ライナー」と合わせて、北総線のサービス向上になる。
これは北総線の値下げと合わせて、高運賃問題で高まっていた不満のガス抜きになるかもしれない。北総線高額運賃訴訟のきっかけは「スカイライナーが通過して線路使用料が入るのに、北総線の運賃が下がらない」だった。最も、現在の枠組みでは新鎌ヶ谷駅停車のスカイライナーの収入もすべて京成電鉄になるから、北総線運賃問題に関しては根本的な解決にはならない。
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