「便利」でもなく「楽しく」もない、そんなローカル鉄道はいらない:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/7 ページ)
12月中旬、日本共産党は提言「全国の鉄道網を維持・活性化し、未来に引き継ぐために」を発表した。鉄道ファンとしてはとても心強い話だが、内容では「活性化」に触れていない。残せば地域が活性化すると考えているなら無責任だ。問われるべきは「鉄道を維持したらどういう未来が待っているか」なのだ。
大事な話が抜けている
一方で「本当にそれでいいのか」と思う。表題の「全国の鉄道網を維持・活性化し、未来に引き継ぐために」とあるけれど、内容は「維持」と「未来に引き継ぐ」だけで、「活性化」に触れていない。残せばそれでいいのかと思うし、「国とJRが残すべきだ」だけ。「残せば自ずから地域が活性化する」と考えているとしたら無責任だ。
問われるべきは「鉄道を維持したらどういう未来が待っているか」だ。廃止されたローカル線の沿線にはその展望がなかった。鉄道を国有化し「国が維持すれば安心」であれば、ローカル線の赤字は増大し、その補てんは地域だけではなく、国民の税金が使われる。それで失敗した国鉄の累積赤字の一部は、主にたばこ税に上乗せされ償還されているけれども、喫煙者は減少傾向だ。もう同じ手は使えない。
提言のなかに「リニア新幹線」より「地域公共交通の支援を強めるべき」との主旨もある。私は「リニアに限らず新幹線は『全国の鉄道網を維持・活性化』するために必要」と思うから、ここにも矛盾を感じる。
そもそも「リニア新幹線」と「地域公共交通」は二者択一ではない。「あっちをやめて、こっちにせよ」ではなく、「両方しっかりやりなさい」という話だ。財源は限られているから優先順位は必要かもしれないけれど、そもそも「提言」のなかに財源の話は出てこない。共産党の綱領には「軍縮」があって、防衛費を削減すればいいらしい。そんなふうにお金が沸いてくると思うなら、もっと無責任に「どっちも」といってほしい。
細かいところを突けばいろいろあるけれど、共産党批判は本題ではない。むしろこの機会に共産党の沿革と綱領を読んでみたら、得心するところもあり、一定の支持があることも理解できる。だからこそ、もっと真剣に考えてほしい。
今回の提言をきっかけに、「ローカル鉄道」と「地域公共交通」について、基本的な考え方を押さえておきたい。
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