W杯で赤字のABEMA、巨額投資をどう回収? 「次の一手」を予想してみた:妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(3/7 ページ)
昨年末のW杯では、全試合無料生中継を実施したサイバーエージェントの「ABEMA」に注目が集まりました。巨額を投じたABEMAのメディア事業は現状なお赤字ですが、今回の投資によって2つの成長余地が生まれたと筆者は考えます。
22年12月時点のABEMAのダウンロード数は9200万で、W杯期間中には700万増加しました。22年9月時点では8300万と発表していたため、四半期で900万DLと大きな成長です。アプリのダウンロードなしでもインターネット環境から視聴が可能であるため、実際に新しくABEMAに触れたユーザーはさらに多いでしょう。
またWAU(Weekly Active Users、週間アクティブユーザー数)の推移を見ると、W杯時には3409万WAUを達成しました。W杯後は下落傾向にありますが、それでも直近の段階で1766万のWAUを維持しています。
W杯以前にも、1700万を超えるようなWAUを記録している時期があります。ABEMAでは注目度の高いスポーツイベントなどのリアルタイム性の高いイベントがあるとWAUが大きく伸びる傾向にあり、朝倉未来選手とメイウェザー選手のボクシングの試合があった週はWAUが1896万と、W杯以前では過去最高となっています。
特に大きなイベントがない週は1200万〜1500万ほどで推移していたことを考えると、1766万のWAUを維持しているというのはW杯の影響でサービスが浸透していると考えてよさそうです。
実際に、W杯をきっかけに格闘技チャンネルは5.7倍、スポーツチャンネルは1.7倍に視聴者数が増加するなど、スポーツ視聴者を中心にユーザーを獲得しています。バラエティーに関しても2倍に伸びているため、普段から何となくABEMAを付けて家での時間を過ごしているようなユーザーも増加していそうです。
さらにサイバーエージェント傘下のBABEL LABELはネットフリックスとのパートナーシップを締結しており、コンテンツ面でもクオリティーを上げるための投資を進めています。配信サービスの武器はコンテンツ力です。同社が今後、どのようなコンテンツを作っていくか注目です。
関連記事
- スシロー、おとり広告で「信用失墜」し客離れ──それだけではない業績悪化のワケ
最近のスシローといえば、おとり広告の問題で景品表示法に係る措置命令を受けてしまった件は記憶に新しいことでしょう。こういった問題が起きるとどのような影響があるのかを「減損損失」という視点から見ていきます。 - 社長は「トヨダ」氏なのに、社名はなぜ「トヨタ」? “TOYODA”エンブレムが幻になった3つの理由
日本の自動車産業をけん引するトヨタ自動車。しかし、同社の豊田社長の名字の読み方は「トヨダ」と濁点が付く。なぜ、創業家の名字と社名が異なるのか? 経緯を調べると、そこには3つの理由があった。 - GMOの根幹にある「55カ年計画」とは? 安田CFOが明かす、市場や売上起点ではない経営
「CFOの意思」第6回の対談相手は、前編に引き続きGMOインターネットグループ副社長兼CFOの安田昌史氏。太陽黒点の周期に基づく「55カ年計画」と、目標達成が当然のGMO式経営とは? - ファミマに吸収合併されたコンビニはどれ? 「ポプラ」「スリーエフ」「am/pm」
ファミリーマートの店舗を目にしたとき、「そういえば、ここは数年前まで別のコンビニじゃなかったっけ?」と記憶をたどったことはないだろうか。同社はこれまで、複数の企業を吸収合併してきた歴史を持つ。 - 「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」 両者を分ける“4つのスキル”とは?
日本企業はなぜ、「部下を育てられない管理職」を生み出してしまうのか。「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」を分ける“4つのスキル”とは? 転職市場で求められる優秀な管理職の特徴について解説する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.