WOWOWはなぜ「巣ごもり需要」を逃したのか 「独占配信商法」では厳しい生き残り:妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(3/4 ページ)
動画サブスク各社が好調な中、「巣ごもり需要」を逃してしまったWOWOW。音楽ライブやスポーツイベントの独占配信で会員数を伸ばしてきましたが、放映権が高騰する中、今後の見通しは厳しいです。どのように生き残りを図るのでしょうか。
スポーツイベントの放映権獲得 どんどん難しく
加入者数の推移をもう少し詳しく見てみると、新規加入件数が28万2000件に対して解約件数は34万2000件と、6万1000件のマイナスです。減少が続くのには、前年同期にはあった大型のスポーツコンテンツが少なかったことが影響しており、加入件数、解約件数ともに減少したと同社は説明しています。WOWOWの加入者数はスポーツイベントに左右されるのです。
近年はNetflixなどの独自コンテンツに優れた動画配信サービスが増加する中で、WOWOWに加入する要因は独占配信のスポーツイベントや音楽ライブとなるケースが多いです。
実際にサッカーのチャンピオンズリーグの放送などがあった直近の第2四半期単体(22年6〜9月)では、5四半期ぶりに会員数は1.3万人のプラスとなり、下げ止まっています。
なお、番組制作費の推移を見てみると19〜20年度は減少傾向にありました。先述したように、WOWOWの番組制作費はスポーツイベントの放映権の影響が大きいです。コロナ禍でスポーツイベントの開催に悪影響が出たため番組制作費も減少していたというわけです。
22年3月期からはスポーツイベントが正常化したこともあり、番組制作費は増加しています。第2四半期時点では番組制作費は減少し増益となっていましたが、通期で見るとそういった状況が続くわけではありません。
通期の計画では、売り上げは4%減、利益面では営業利益は56.3%減の見通しです。第2四半期までは番組制作費の減少で増益となっていましたが、今後は番組制作費を増加させていくことが分かります。ただし、想定為替レートは145円と、23年1月時点のレートから考えると高水準です。短期的には海外のコンテンツ購入が想定よりも減少する上振れ要因はあると考えられます。
とはいえ長期的に考えると、スポーツイベントに関しても動画配信サービスも増え競争が激化したこともあり、放映権料は高騰しているものが多いです。最近ではW杯の高騰する放映権料を民放各局が負担できず、ABEMAが放映権を獲得したことは先日の記事でも触れた通りです。
となると会員数が減少し収益性が悪化しているWOWOWでは、これまでのようにスポーツイベントの放映権の獲得が難しくなってくる可能性がありそうです。会員数を増やそうと思えば番組制作費が増加して収益性が悪化し、コンテンツを購入する余力はなくなっていきます。スポーツイベントが主要コンテンツのWOWOWは、構造的に苦しい状況にあると考えられます。
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