「バス共同経営」の熊本県でMaaSアプリサービス開始 まるで公共交通問題のデパートだ:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/6 ページ)
前回、ドイツ発祥の公共交通施策「運輸連合」と熊本県における路線バス「共同経営推進室」を紹介した。その後、熊本県はMaaSアプリ「my route」のサービスを開始すると発表。熊本市が先行したけれども、時を置かず他の都市でも同様の計画が立ち上がっていた。
「my route」の運営はトヨタ? なぜ?
「my route」は熊本のみならず、全国で展開するサービスだ。乗り換え検索とデジタルチケット購入機能を基軸とし、1月28日のアップデートで目的地の備忘録「お出かけメモ」が実装された。乗り換え検索機能は「ナビタイムジャパン」と提携しており全国規模で利用できる。
地域交通事業者との連携地域は14ある。今回始まった熊本のほか、福岡、北九州、糸島、宮崎、佐賀、長崎、大分、宮崎・日南、沖縄、愛媛、富山、愛知、横浜だ。九州に力を入れている理由は、サービスインの実証実験が福岡市で行われたからだ。西日本鉄道の協力が大きかったという。正式サービス後は九州各地に広がっていった。
「my route」は22年8月中旬に約33万ダウンロード(参照リンク)。1カ月で1万人のユーザー増となっている。この推移のままだとすれば、23年2月半ばには約39万人を超えているだろう。
私の居住地、横浜で使えるとは知らなかった。横浜市営地下鉄は21年4月からデジタル1日乗車券を販売している。これが「my route」だった。デジタル1日乗車券は知っていたから、「my route」を見過ごしていた。横浜市のサービス開始はその前年、20年の7月22日からだった。
さっそくアプリをダウンロードしてみた。自宅から横浜駅へ。夜明け前に検索すると、自宅から最寄り駅まで徒歩2.8キロメートル、そこから地下鉄に乗る。時刻を7時台にするといくつか候補があって、自宅からバスに乗って駅、自宅からタクシーで駅、自宅から自転車で駅、というルートが出た。詳細ルートの経路にタクシーがあると、タクシー配車サービスアプリの起動ボタンが出る。地下鉄経路にはデジタル1日乗車券の購入ボタンが出る。
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