楽天モバイル、無料プランを廃止しても「赤字拡大」のワケ:妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(7/8 ページ)
楽天モバイルの投資で苦しい状況にあり、無料プランを廃止したり、社員には契約ノルマが課せられているという報道もあった楽天。それでも赤字が拡大しているのはなぜなのでしょうか。
カギは「つながりにくさ」改善か
最後に、今後の業績改善にのために重要な取り組みについても触れておきます。つながりにくいという評価がある程度定着してしまった楽天モバイルにとって、プラチナバンドの導入も重要です。
プラチナバンドの割り当て自体は決定しており、楽天は24年3月からの開通を目指すとしています。
しかし22年11月のプラチナバンド再割り当ての際に出した総務省の移行スケジュールによると、標準5年ほどを要する見込みです。楽天モバイルの目指している24年3月とは差が大きいです。
というのも総務省が想定していた移行イメージは、使用開始して以降徐々に無線局数が増えていき、移行が完了するというものです。つまり、楽天が掲げる24年3月とは、文字通り使用開始の時期であって、一部のユーザーが使えるだけということでしょう。
このためプラチナバンドを使用開始できたとしても、無線局数が増えていくまではつながりにくい状況はしばらく変わらない可能性が高そうです。この点を考慮しても、顧客獲得ではしばらくは苦しい状況が続きそうですね。
また、楽天モバイルは23年初旬に法人サービスをスタートさせると発表しています。
ただ、この法人向けも成長の見通しが明るくはなさそうです。
基地局整備は続くものの、プラチナバンドはまだしばらく時間がかかり、つながりにくい状況がまだ数年かかる可能性があります。また、個人のユーザーが加入する要因である楽天経済圏との相乗効果も、法人契約ではメリットが大きくはありません。顧客獲得が大きく進む要因になるとは考えづらいと言えるでしょう。
関連記事
- スシロー、おとり広告で「信用失墜」し客離れ──それだけではない業績悪化のワケ
最近のスシローといえば、おとり広告の問題で景品表示法に係る措置命令を受けてしまった件は記憶に新しいことでしょう。こういった問題が起きるとどのような影響があるのかを「減損損失」という視点から見ていきます。 - 社長は「トヨダ」氏なのに、社名はなぜ「トヨタ」? “TOYODA”エンブレムが幻になった3つの理由
日本の自動車産業をけん引するトヨタ自動車。しかし、同社の豊田社長の名字の読み方は「トヨダ」と濁点が付く。なぜ、創業家の名字と社名が異なるのか? 経緯を調べると、そこには3つの理由があった。 - 「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」 両者を分ける“4つのスキル”とは?
日本企業はなぜ、「部下を育てられない管理職」を生み出してしまうのか。「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」を分ける“4つのスキル”とは? 転職市場で求められる優秀な管理職の特徴について解説する。 - ファミマに吸収合併されたコンビニはどれ? 「ポプラ」「スリーエフ」「am/pm」
ファミリーマートの店舗を目にしたとき、「そういえば、ここは数年前まで別のコンビニじゃなかったっけ?」と記憶をたどったことはないだろうか。同社はこれまで、複数の企業を吸収合併してきた歴史を持つ。 - 「優秀だが、差別的な人」が面接に来たら? アマゾン・ジャパン人事が本人に伝える“一言”
多様性を重視するアマゾン・ジャパンの面接に「極めてだが優秀だが、差別的な人」が来た場合、どのような対応を取るのか。人事部の責任者である上田セシリアさんに聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.