「褒め下手な上司」が知るべき2つの原則 ただ褒めそやしても、部下は育たない:「モチベーションのため」は誤解!(3/3 ページ)
「どう褒めていいか分からない」「何を褒めればメンバーの成長につながるのかが分からない」と、部下を褒めることに苦手意識を持つ上司は多いようです。適切に人を褒めるとは、どういうことなのでしょうか?
「褒め」を成長につなげるためには
最後にメンバーを褒める上で、より成長につながる「褒め」を実行するために、リーダーの皆さんに意識してもらいたいことをお伝えします。
どう褒めれば喜ぶタイプなのか把握する
まず、メンバーに対して興味を持たないと、基本的に有効な褒め方はできません。その人のことをしっかりと見ていないと、行為を褒める事は難しいのです。また、メンバーのキャラクター(個性)をしっかりと理解することも重要なポイントです。キャラクターを理解すると、その人に合わせた心に響く褒め方が分かってきます。
メンバーの業務において重要なポイントを見極める
現在、メンバーが遂行している業務の中で、その人自身が成長するために重要なポイントをリーダー自身が理解し、伝え、見守ることが必要です。この重要なポイントがズレてしまうと、どれだけ褒めたとしても本人には響かず、効果は期待できません。
ここで大事なのは、目に見える「結果」より「プロセス」を褒めることにあります。
例えば、受注件数を目標とした営業職のメンバーが、日々の架電量や月の訪問件数が前月より圧倒的に下回っているが、受注件数は達成できている、という状況だとします。
リーダーは「結果が出ているからOK!」と「結果」だけを見て褒めているかもしれません。すると、メンバーは「結果を出していれば褒められる」という学習をし、日々の架電や訪問数などのプロセスを見直すことはありません。当然ながら、その状況が続いていくと、リードは尽きていき徐々に受注件数は落ち、目標達成ができなくなってしまいます。
この場合に重要なポイントは、「結果に対してのパフォーマンスを安定的に出すために、日々のリードをどれだけ潤沢に持ち続けるか」ということ、つまり「プロセス」です。
リーダー自身が重要なポイントを理解し、メンバーに伝え続け、行動を見守ることが必要となります。 そして、このプロセスの改善によって、メンバーのパフォーマンスが出始めたときに「褒める」ことが最も大事なのです。
「褒めて伸ばす」ことは必ずしも最適解とは限らない
これまで、メンバーを「褒める」ことはその人の強みを伸ばし成長を促すために必要なことだとお伝えしてきました。ただ、もちろん「叱る」こともメンバーの強みを生かし、良いチームにしていくためには時として必要です。
どんなクライアントも興味を示す魅力的なプレゼンができるという強みを持ったメンバーがいたとしても、約束にとてもルーズで、プレゼンの場に10分遅刻してしまえば、強みを生かすことはできません。強みを生かすために必要な社会人としてのマナーを伝えるためには、叱ることも時として重要です。
まとめ
今回はメンバーの成長につながる褒め方や、褒める上で重要なポイントなどをお伝えしました。「褒める」ことの本質が理解できれば、メンバーを「褒めて伸ばす」ことに少しずつ抵抗がなくなってくるのではないでしょうか?
メンバーの成長に期待し、メンバー自身がよりチャレンジできる機会やその人に合った経験を提供し、そのプロセスを褒めましょう。
著者紹介:角 裕一
株式会社ウィルオブ・コンストラクション 代表取締役社長/株式会社ウィルグループ 取締役
2003年、総合人材サービスを手掛けるウィルグループへ新卒入社後、人材コーディネーター・営業を経て、人事部立上げを担う。その後グループ会社の取締役を経て、ウィルグループ人事本部長として活躍。2021年、グループ会社の建設技術者に特化した人材サービス会社ウィルオブ・コンストラクション代表取締役社長に就任(現任)し、翌年にはプロパー社員として初のウィルグループ取締役となる。
人事部立ち上げ時期には会社のミッション・ビジョン・バリューの策定や人事評価制度の設計、タレントマネジメントの仕組みを構築。人事本部長時代には、時代に先駆けて「Well-being」の指標導入や働き方改革を推進した。現在は独自の組織強化/マネジメントメソッドを生かし経営者として奮闘中。
ウィルオブ・コンストラクションのWebサイト:https://willof-construction.co.jp/
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