“黒幕”は金融庁? 横浜銀が「今さら」神奈川銀の統合を受け入れた深刻な地銀事情:金融行政の視点で分析(2/3 ページ)
地銀トップの横浜銀行が同じ神奈川県の第二地銀「神奈川銀行」を完全子会社化する。浜銀が預金残高ベースで40分の1程度の小規模地銀を経営統合するということ自体は大した話ではないが、金融行政の観点からはニュースバリューがある。
金融庁が目指す「一県一地銀」
ではなぜ今また、浜銀と神奈川銀行の経営統合なのでしょう。金融庁が地域金融の安定化に向けた現時点で目指す姿が、「一県一地銀」の実現です。そしてそれを急ぐ理由が2つあるのです。
1つは、地銀、特に無尽を発祥とし、経営基盤の弱い第二地銀にとってこの先大きな試練が待っており、それを乗り越えていくためには地元の有力地銀との統合による救済措置が必要である、ということです。大きな試練とは、コロナ禍の初期に国の中小企業救済策として実施された金利なし(当初3年間)担保なしのいわゆる「ゼロゼロ融資」の返済開始ピークが、迫っていることにあります。
ゼロゼロ融資は元本の返済も一定期間猶予されていて、返済猶予期間は最長5年とされていたものの、無利子期間でもある3年程度に猶予期間を設定した企業が多いと言われています。
民間金融機関のゼロゼロ融資は20年5月に取り扱いを開始し、翌6月から実行額が増え21年3月の取り扱い終了までコンスタントな申し込みがありました。すなわち、20年から3年が経過した23年6月以降に、その金利および元本返済開始がピークを迎えるわけなのです。
この3年で大手企業はビジネスモデルに大幅な変更を加えるなどして軒並み業績が回復傾向にあります。一方で、中小・零細企業はその限りにあらずで、ゼロゼロ融資のおかげでなんとか今日まで延命しただけの“ゾンビ企業”も多数あるのです。
中小、零細企業の多くは、地方銀行をメインバンクとして取引をしています。コロナ禍に加えて直近の円安、コスト高に苦しむ企業も多く、ゼロゼロ融資で生き延びてきたものの返済が始まれば、経営が立ち行かなくなる先が続々出てくることは確実です。
仮にそうなれば、地銀の不良債権が一気に増えるという懸念があるのです。地銀上位行のように体力のある銀行はゼロゼロ融資の不良債権を処理してこれを乗り切ることが可能ですが、一部の第二地銀など体力の落ちている地銀にとっては、死活問題になりかねません。
金融庁とすれば、地銀破綻で金融不安を起こすようなことは絶対に避けたいわけで、早期に何らかの手を打たなくてはいけない、というのが喫緊の課題なのです。SBIホールディングスが「第4のメガバンク構想」と銘打って「限界地銀」の救済を名乗り出てはいましたが、これに関しては10行で打ち止めとの方針を表明しており、他の救済施策が必要になってもいました。
(関連記事:“限界地銀“を食い物に? SBI「地方創生トライアングル戦略」の中身の薄さ)
弱小地銀救済の大義名分になる再編
そこで最も実効性が高い施策が、各県内のリーダー地銀に同一県内の他地銀の面倒を見させるという策なのです。そもそもリーダー地銀には地元経済を支えるという使命があるわけで、これが弱小地銀救済の大義名分にもなるわけです。
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