“黒幕”は金融庁? 横浜銀が「今さら」神奈川銀の統合を受け入れた深刻な地銀事情:金融行政の視点で分析(3/3 ページ)
地銀トップの横浜銀行が同じ神奈川県の第二地銀「神奈川銀行」を完全子会社化する。浜銀が預金残高ベースで40分の1程度の小規模地銀を経営統合するということ自体は大した話ではないが、金融行政の観点からはニュースバリューがある。
迫る独禁法の時限措置
もう一つ金融庁が「一県一地銀」化を急ぐ理由が、同一県内地銀統合に関する独占禁止法の特例措置が30年11月までの時限措置であるということです。金融庁自らの尽力によって実現したこの特例措置に対して、複数地銀林立県における地銀の多くがいまだ経営統合に無関心であることに対して、金融当局として憤懣やるかたない思いであろうことは想像に難くありません。
今回、地銀トップ行の決断を見せることで「一県一地銀」化に向けた経営統合が時限性のものであることを再意識させ、その重い腰を上げさせる契機にしたいという強い意思が金融庁にあると考えるのは、至極妥当であると思います。
首都圏内に複数の銀行 危機感薄い?
ちなみに関東圏の地銀の状況はどうなっているでしょうか。東京都には東日本銀行(浜銀のコンコルディアFG)ときらぼし銀行、東京スター銀行の3行。千葉県も同様に千葉銀行と千葉興業銀行、京葉銀行の3行、埼玉県には埼玉りそな銀行(地銀協加盟ではない地域金融機関)と武蔵野銀行の2行――というように各都県に複数の地銀が存在しています。
比較的経済的に恵まれている関東地方は、他地域に比べて地銀の危機感が薄く、地元の地銀が経営統合して地域経済の安定化をはかろうという発想には乏しいように映ります。
地銀改革に残された時間少ない
22年は青森県と長野県で「一県一地銀」化に向けた地銀経営統合の動きがあり、金融庁肝入りの地銀再編策を軸とした改革は確実に歩みを始めてはいます。しかし日本経済の心臓部である関東経済圏が動かないことには、なかなか全国に伝播するのは難しいのが実情です。
だからこそ今回の神奈川県における「一県一地銀」体制の実現は、規模的には小さな経営統合でありながら地銀トップ行の決断として大きな意味を持つのだと思うのです。果たしてこの決断が、地銀界に大きな刺激を与えることになるのか否か。今言える確かなことは、コロナ禍で一層厳しさを増した地銀改革に、残された時間は決して多くないということです。
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