ファストリ、「減益なのに賃上げ」の謎 中国・国内でも苦戦しているのになぜ?:妄想する決算「決算書でわかる日本経済」(2/5 ページ)
決算書から日本経済を読み解く本連載。今回取り上げるのはファーストリテイリングです。初任給を30万円に設定したり、給与を最大40%アップする大きな賃上げを実施したりしたことで話題となったユニクロや、GUを運営するアパレル企業です。
増収だが減益 なぜ?
ファーストリテイリングの事業セグメントは(1)国内ユニクロ(2)海外ユニクロ(3)ジーユー(4)グローバルブランドと4つあります。
それぞれの事業の業績の推移は、前年同期比で
- (1)国内ユニクロ:売り上げ2409.4億円(6.4%増) 利益394.7億円(5.6%減)
- (2)海外ユニクロ:売上3578.9億円(19.4%増) 利益572.9億円(4.4%減)
- (3)ジーユー:売り上げ793.6億円(13.6%増) 利益106.3億円(19.3%増)
- (4)グローバルブランド:売り上げ376億円(22.4%増) 利益7億円(72.1%減)
となっており、ジーユーが増収増益になったことを除けば全事業が増収減益。事業全体としては、増収減益の傾向でした。
それでは続いて、それぞれの事業についてもう少し詳しく見ていきましょう。
まず好調だったジーユー事業では、マストトレンドの商品の数量を十分に用意して販売したことで好調だったと発表しています。
ファーストリテイリングでは、ジーユーはトレンド商品、ユニクロは定番商品を長く大量に生産することで質の高い商品を作り、ブランドを分けて展開しています。コロナ禍の影響が減少し外出需要が増加する中で、トレンド商品の販売も好調だったと見られます。
さらに、値引き率の改善によって粗利率が上昇し、営業利益も改善したとしています。アパレル企業では、販売が不調になると在庫処分のための値引きが増え、利益率が低下してしまうのが通例です。しかし、今期は販売も好調だったことで利益率も改善し好調となっています。
続いて、国内ユニクロ事業。9〜10月が例年より気温が低く、ジャケットやニットなどの販売が好調だった一方で、冬服が売れ始め商売規模の大きくなる11月には気温が高めに推移したこともあり、販売に苦戦しました。
第1四半期の売り上げを分解すると客数は4.4%減、客単価は9.5%増となっていますが、11月単月では客数が9.7%減となっており、販売が苦戦していたことが分かります。さらに円安進行による調達コストの増加もあり、利益面では減益となったようです。
しかし12月は気温が低く推移し、過去最高の売り上げを更新。4カ月の累計では前年比でも増収増益となっており、これからの業績では大きな改善が期待できそうです。アパレル企業にとって天候の重要性が分かりますね。
また、先述したジーユー事業においても取り上げた通り、アパレル企業で業績に大きな影響を与えるのは値引き販売です。
このため暖冬になると、商品が想定通りには売れずに値引き販売が必要となり、業績悪化につながるケースは多いです。しかし、価格改定と値引き利率の改善が進んだこともあり、客単価は9.5%増となっています。
ユニクロは定番商品が多いため、長期の販売が期待できることが強みです。在庫のコントロールができれば値引きは少なくて済むため、この点も影響していると見られます。
また、コスト面では店舗のパート・アルバイトの時給アップによって人件費が増加しました。中期的には店舗オペレーションの効率化を進め、生産性を改善して人件費率を改善させていくとしています。
正社員の給与アップが話題になっていましたが、それに先立ってパート・アルバイトの人件費は増加していたようです。
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