ファストリ、「減益なのに賃上げ」の謎 中国・国内でも苦戦しているのになぜ?:妄想する決算「決算書でわかる日本経済」(5/5 ページ)
決算書から日本経済を読み解く本連載。今回取り上げるのはファーストリテイリングです。初任給を30万円に設定したり、給与を最大40%アップする大きな賃上げを実施したりしたことで話題となったユニクロや、GUを運営するアパレル企業です。
国内ユニクロは?
今回不調だった国内ユニクロでは12月から業績が大きく改善、中国大陸では行動制限が明け1月の業績は改善している上、その他の海外市場は非常に好調です。こうした状況を鑑みても、人件費のコスト増を補う好調が期待できるということですね。
なお、純利益は減少となる見通しを立てています。これに関しては為替の影響が大きいです。
グローバル企業であり、多額の外貨を持つファーストリテイリングでは、円安が非常に進んだ影響もあり、22年8月期の為替差益は1143億円となっています。その影響が減少するため、純利益ベースでは業績悪化の可能性があるということです。
また、財務状況を見ていくと現預金は1兆2041億円→9140億円に2901億円減少している一方で、金融資産は1275億円→6255億円へと増加したとしています。これは保有する現預金を比較的短期で安全性の高い債券購入に充てたためのようです。
欧米市場を中心に利上げが進んでおり、安全性の高い債券の利回りも上昇しています。ユニクロも多額の外貨を抱えているため、債券で運用することにより新たな収益源を増やしているようです。実際に受取利息は83億円ほど増加しています。
今回の決算期である22年9月以降、利上げは続いているため、利息収入はさらに増加することが考えられるでしょう。こうした収益も含め、人件費を補っていく形になりそうです。
まとめ
ファーストリテイリングは増収減益ですが、不調だったのは国内と中国大陸市場で、他の海外市場は好調です。
国内では12月以降は気温が低く推移しており、また中国では行動制限が明けたことから考えても、今後は好調が期待できそうです。
給与改善に関しては各国の市場では以前から続いていて、国内の給与も追随する流れのようです。
また、人件費は増加する一方で業務効率化による収益性の改善や債券投資による収入の確保を進めているようで、こうした取り組みを通じてどれだけ収益性を改善していけるかに注目です。
筆者プロフィール:妄想する決算
決算は現場にある1次情報とメディアで出てくる2次情報の中間1.5次情報です。周りと違った現場により近い情報が得られる経済ニュースでもあります。上場企業に詳しくなりながら、決算書も読めるようになっていく連載です。
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