連載
全国旅行支援で「宿泊料が高止まり」──ドーミーイン、稼働率は“復活”せずとも黒字転換できたワケ:妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(2/4 ページ)
決算書から日本経済を読み解く本連載。今回はホテル「ドーミーイン」を運営する共立メンテナンスを取り上げます。2022年10月に全国旅行支援が始まったことで、宿泊料金は高止まりしており、ホテル業界全体がこれまでの苦境から一転して、好調の模様です。
売上構成は3割が寮事業、6割がホテル事業
共立メンテナンスの事業セグメントは
- (1)学生寮や社会人寮などの寮
- (2)ホテル
- (3)総合ビルマネジメント
- (4)フーズ
- (5)デベロップメント
と5つあります。
売上構成としては、寮事業が31%、ホテル事業が63%を占めます。今回は、この2つの主力事業にフォーカスします。
それぞれの事業の業績の推移は
- (1)寮:売り上げ364.5億円(7.9%増) 利益28.3億円(5.4%減)
- (2)ホテル:売り上げ745.2億円(61.5%増) 利益72.9億円の赤字→58.7億円の黒字
となっており、寮事業は増収減益ですが、ホテル事業が増収で大幅な黒字転換しており、今回大きく業績が改善した要因はホテル事業にあったことが分かります。
まず寮事業に触れると、コロナ禍で入居率が大きく悪化しています。コロナ禍前は98.7%とほぼ100%に近い入居率がありましたが、92〜93%で推移するように。入居率の低下が業績に悪影響を与えていたことが分かります。
留学生の入寮に影響が出た他、社員寮においても新入社員研修の需要が減少したことが影響したようです。
直近でも一部の留学生の入国延期が起きていると報道されます。コロナ禍が寮事業に与える影響は今なお続いています。市場予測を見ても、少子化で国内の学生数は減少している上、留学生も回復傾向が続く見通しではあるものの、コロナ禍前の水準への回復は26〜27年頃の見通しです。
寮事業は市場シェアを上げることで事業成長を考えているようですが、大きな成長は期待できない状況のようです。となると、今後の業績拡大はホテル事業にかかっていると言っても過言ではありません。
関連記事
- スシロー、おとり広告で「信用失墜」し客離れ──それだけではない業績悪化のワケ
最近のスシローといえば、おとり広告の問題で景品表示法に係る措置命令を受けてしまった件は記憶に新しいことでしょう。こういった問題が起きるとどのような影響があるのかを「減損損失」という視点から見ていきます。 - 社長は「トヨダ」氏なのに、社名はなぜ「トヨタ」? “TOYODA”エンブレムが幻になった3つの理由
日本の自動車産業をけん引するトヨタ自動車。しかし、同社の豊田社長の名字の読み方は「トヨダ」と濁点が付く。なぜ、創業家の名字と社名が異なるのか? 経緯を調べると、そこには3つの理由があった。 - 「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」 両者を分ける“4つのスキル”とは?
日本企業はなぜ、「部下を育てられない管理職」を生み出してしまうのか。「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」を分ける“4つのスキル”とは? 転職市場で求められる優秀な管理職の特徴について解説する。 - ファミマに吸収合併されたコンビニはどれ? 「ポプラ」「スリーエフ」「am/pm」
ファミリーマートの店舗を目にしたとき、「そういえば、ここは数年前まで別のコンビニじゃなかったっけ?」と記憶をたどったことはないだろうか。同社はこれまで、複数の企業を吸収合併してきた歴史を持つ。 - 「優秀だが、差別的な人」が面接に来たら? アマゾン・ジャパン人事が本人に伝える“一言”
多様性を重視するアマゾン・ジャパンの面接に「極めてだが優秀だが、差別的な人」が来た場合、どのような対応を取るのか。人事部の責任者である上田セシリアさんに聞いた。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.