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全国旅行支援で「宿泊料が高止まり」──ドーミーイン、稼働率は“復活”せずとも黒字転換できたワケ:妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(3/4 ページ)
決算書から日本経済を読み解く本連載。今回はホテル「ドーミーイン」を運営する共立メンテナンスを取り上げます。2022年10月に全国旅行支援が始まったことで、宿泊料金は高止まりしており、ホテル業界全体がこれまでの苦境から一転して、好調の模様です。
そんなホテル事業について、23年第3四半期までのここ数年の業績推移を見ていきます。
売上高に関してはコロナ以前の水準を上回る水準にまで増加しており、これは客室数の増加が大きく影響しています。20年3月期末に1万4783室を有していたドーミーインは、23年3月期末までに1万6732室と13%ほど増やす計画を持っていました。
一方で利益面は、黒字化はしたもののコロナ以前の水準には及ばない見通しです。つまり、客室数の増加によって売り上げは増加したものの収益性はコロナ以前には及んでいないというのが現状です。
続いてドーミーインの稼働率を見ていくと23年3月期はおおむね80%代後半。業界平均が50〜60%代の中では比較的好調です。大浴場やサウナなどのサービスが充実していることで人気を得て、高い稼働率を実現しています。
とはいえコロナ禍前の19年4〜12月は、90%を超えるような稼働率でした。コロナ以前の水準には戻っていません。
旅行支援があった10月以降の稼働率を19年の同月と比べてみると
- 10月:94.3%→85.7%
- 11月:94.8%→88.4%
- 12月:90.9%→84.4%
となっており稼働率はコロナ前には及んでいません。
さらに11月に関しては前期比でも3.3%の減少です。旅行支援は稼働率の増加には大きな影響を与えていなかったようです。
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