旭化成「過去最大1050億円赤字」 売上は絶好調なのに、なぜ?:妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(1/4 ページ)
「1050億円赤字」を記録した旭化成。売り上げは絶好調なのに、なぜ過去最大の赤字をたたき出してしまったのか?
決算書から日本経済を読み解く本連載。今回は総合化学メーカーの旭化成を取り上げます。旭化成は3月8日に業績の下方修正を発表し、2023年3月期の業績は03年3月期以来の赤字で、過去最大の1050億円赤字となる見通しを発表したことで話題を集めました。そんな旭化成の現状について見ていきましょう。
旭化成は、3つの大きな大きな事業セグメントを持っています。(1)マテリアル(2)住宅(3)ヘルスケアです。
(1)マテリアル事業はその名の通り、各種素材や電子材料などを扱っている事業です。その他、(2)住宅事業として建設や建材を取り扱っていたり、(3)ヘルスケア事業として医薬品や医療用の商材を取り扱ったりしています。
そんな旭化成ですが、なぜ20年ぶりの赤字となってしまったのでしょうか。
赤字の要因は、マテリアル事業で15年に買収したPolypore社です。リチウムイオン電池や燃料電池などに使われる「セパレータ」の事業を手掛けている企業です。
旭化成は従来より、ハイポア事業として湿式LIBセパレータを展開していました。加えて、Polypore買収によって車載用途で実績のある、乾式LIBセパレータ・鉛蓄電池用のセパレータ事業を手に入れ、EV化で伸びていく車載用電池市場での市場動向の変化と技術的課題の解決を図ろうとしていたわけです。
買収後は以前から事業展開していたハイポア事業と一体化して運営されてきましたが、事業環境の変化を受けて計画を大きく下回る状況となったと同社は説明しています。
このセパレータ市場では、従来より提供していた湿式の需要が拡大し、買収した乾式LIBセパレータは需要は低迷し、鉛蓄電池用のセパレータは収益が伸び悩むという状況になりました。
市場がどちらに向かっていくか不透明な中で、どちらの市場成長にも対応できるようにしていたということです。投資した時点の判断が間違っていたということは必ずしもできませんが、結果的には完全に失敗となってしまいました。
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