江ノ電の名物「12分ダイヤ」はなぜ終了したのか 70年も続いたのに:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/6 ページ)
「江ノ電」は、神奈川県の藤沢市と鎌倉市にまたがって走る電車だ。名物の1つに「12分ダイヤ」があり、70年以上も変わらず使われてきた。しかし2023年3月18日のダイヤ改正で、その伝統が終わった。江ノ電は14分間隔になった。伝統が終わった背景と、14分間隔になった理由を紹介する。
その江ノ電の名物の1つに「12分ダイヤ」があった。江ノ電に乗った人はお気付きだろうか。起点の藤沢駅の発車時刻が毎時00分、12分、24分、36分、48分だった。これが6時台から21時台半ばまで続く。鎌倉駅も同じ。駅の時刻表が、まるで観光地のケーブルカーのように同じ数字がズラリと並んでいる。ラッシュ時も昼下がりの閑散時間帯も同じ。
途中駅ではさすがに00分、12分……とはならないけれど、5つの数字を覚えることには変わらない。例えば江ノ島駅から鎌倉方面は毎時11分、23分、35分、47分、59分だ。これが6時から21時台半ばまで同じ。鎌倉高校前駅から藤沢方面は毎時06分、18分、30分、42分、54分になっていた。知人によると、鎌倉高校の生徒なら誰でも暗唱できたそうだ。
早朝深夜は別として、利用する駅の5つ数字を覚えていれば、いつでも「発車時刻まであと10分あるからトイレに寄ろう」とか「あと2分で発車する電車に間に合わない。次の電車にしよう。駅までゆっくり歩こう」と判断できた。
江ノ電がいつからこの時刻表を使っているか。実は1952年(昭和27年)からずっとこのまま。70年以上も変わらなかった。
2023年3月18日のダイヤ改正で、その伝統が終わった。江ノ電は14分間隔になった。きっちり14分おきだけど数字はバラバラになった。これが江ノ電利用者で話題となった。日常的に江ノ電に乗る人々にとって、江ノ電の発車時刻は生活のリズムだ。江ノ島や鎌倉の人々は12分単位で生活しているとはいい過ぎか。しかし、そのくらいの冗談は通じるくらい浸透していた。
12分間隔から14分間隔へ、たかが2分、されど2分。この2分のおかげで、発車時刻を覚えづらくなってしまった。現在、藤沢駅の発車時刻は、6時台から04分、18分、32分、46分、7時台は00分、14分、28分、42分、56分だ。14分間隔にすると、毎時同じにはならない。7時台と同じ時刻に戻るのは14時。7時間サイクルでやっと元に戻る。
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