トヨタは佐藤社長体制で何がどう変わるのか:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ)
佐藤恒治社長の新体制で初の方針説明会を実施したトヨタ自動車。「2026年までに10種の新EVを投入」が大きく報じられているが、それは大きな絵柄の中のごく一部にすぎない。説明会で語られたのは……。
1月の社長交代発表から3カ月が経過した4月7日。ようやくトヨタ自動車の新体制方針説明会が開かれた。
予想はしていたことながら、範囲は広範におよび、簡単には記事にまとまらない。誠に書き手泣かせの説明会であった。既に大手マスコミ各社からは、中嶋裕樹副社長の説明パートでの発言「2026年までに10種の新EVを投入」「販売台数も年間150万台」ばかりが強調されているが、それは大きな絵柄の中のごく一部、うそではないがトリミングされた真実の一部にすぎない。
というわけで、今回はその大きな絵柄をトヨタの発表資料に沿って説明していきたい。
さて、まずは佐藤恒治社長のプレゼンからだ。ポイントは3つ。トヨタは「クルマの価値の拡張」「モビリティの拡張」「社会システム化」の3つのテーマに取り組んでいくことになる。佐藤体制のテーマは既に1月の段階で「継承と進化」であると定義されており、豊田体制の流れをくみながら、正常進化させていく形である。
継承とは何かをひも解けば、それは「もっといいクルマをつくろうよ」であり、それを事業として見れば「これからも、『商品で経営する』クルマ屋トヨタの一丁目一番地」ということになる。ではどうやってもっといいクルマをつくるのかと言えば、その要となるのがチームプレーになると佐藤新社長は語る。「世界37万人のトヨタの仲間と、仕入先、販売店の皆さまと一緒に、全員でクルマをつくっています」
豊田章男という飛び抜けた経営者の後を継いで、いきなり円熟期の豊田氏と変わらず経営ができる人材は世界中を探してもいない。豊田前社長は14年経験を積み重ねたベテラン。そこに1年目から同じだけのプレゼンスを備え、同じように経営しろと要求するのはさすがに無理難題がすぎる。
だからこそ佐藤社長は「チームで、同時に、有機的に動く」ことを新しい変化として掲げているし、豊田前社長はそれを会長として支えて、独り立ちさせようと考えている。仲間と共に戦う。それこそが佐藤新体制の大きな特徴であるといえるだろう。
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