2015年7月27日以前の記事
検索
連載

トヨタは佐藤社長体制で何がどう変わるのか池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)

佐藤恒治社長の新体制で初の方針説明会を実施したトヨタ自動車。「2026年までに10種の新EVを投入」が大きく報じられているが、それは大きな絵柄の中のごく一部にすぎない。説明会で語られたのは……。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-

トヨタが世界に対して果たす役割

 さて、その上でトヨタが社会、あるいは世界に対して果たす役割は何かと言えば、それはこれまで通り「幸せの量産」である。何を何台つくるかはそのための手段でしかないし、もっと言えば単なる結果であって、経営課題として常に一番上に置くのはあくまでも「幸せの量産」ということになる。

 「幸せの量産と言われてもどうも腑に落ちない」人もいるだろう。そこを説明したのが図2だ。トヨタは世界各地域でクルマを販売するグローバル企業であり、地域によって求められるクルマも技術も異なる。これまでトヨタが何度も説明してきたマルチソリューションとは、「幸せの量産」のために、多様な地域の人々の暮らしそれぞれに合わせた最適な答えを複数用意することであり、それら複数のクルマを最速かつ合理的に生産するために共通基盤技術であるTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)を採用していくことになる。


図2:トヨタは多様な地域の個性に合わせた商品を展開する

 TNGAの採用によって、各地域で具体的にどのように顧客の支持を得られるようになったのかを表したのが図3である。2005年比で小売台数総合計を32%増やしながら、地域ごとのシェア比を均等に近づけている。乱暴に言えば日米がメインの会社から、アジアや中国でもマーケットの取れる会社へと転換を図っているということになる。


図3:18年以降進めてきた地域軸経営によって、総量の増加に加えて、地域の柱が多角化した

 もちろん、そうやって多様な地域のニーズに応える商品をつくることで、コスト的に厳しくなっては意味がない。そこを説明するのが図4である。左のリーマンショックの08年と部品不足で生産が思うようにいかなかった22年を比べると、22年は08年比で台数を8%落としながら、営業利益を32%増やしている。そんなことができているのは「TNGAをはじめとする原価低減」の効果であり、それによって得られたものは「稼ぐ力」と「未来への投資力」である。


図4:稼げる体質の強化と、原資の確保による安定的な未来投資

 という話になると必ず出てくるのが「トヨタばっかりもうけやがって」という陰口なのだが、挙げた利益を「国・お客様・仕入れ先・株主・従業員」にどのように分配してきたかを示すのが図5で、多くに具体的な金額が入っている。まあこれだけのエビデンスを出しても文句を言う人はなくならないとは思うが、数字ベースで見るとこういうことだ。図のタイトルにトヨタの主張が込められている。


図5:従業員や株主、仕入先などのステークホルダーとともに成長するトヨタのサイクル

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る