トヨタの新社長就任で、どんなクルマが出てくるのか:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/7 ページ)
トヨタ自動車の方針説明会で、どのようなことが語られたのか。中嶋裕樹副社長の説明パートを中心にトヨタのクルマづくりがどうなっていくかを見ていこう。
デザインから期待できる車両キャラクターの方向性
モデル3との比較において、余談を述べれば、床下にバッテリーを置くレイアウトをスタンダードにしたテスラのデザインでは、ドライバーの着座位置はどうしても高くなる。当然頭上のクリアランス確保のためには、ルーフ高は上がる。
テスラは、ドアとサイドウインドーの境目、それはつまりウエストラインを下げ、グラスルームを厚く取ったデザインにまとめた。パッケージとして合理的とも言えるが、一方でクルマの普遍的なカッコ良さを担う、薄く低く幅広くというデザインセオリーには反することになる。グラスルームを薄く小さく取ったトヨタのコンセプトモデルと比べると明らかにその印象は異なって見えるはずだ。
ノーズから完全に連続して立ち上がるAピラーと、後席頭上にピークが置かれたこのデザインは、新型プリウスで始まった新しいトヨタデザインだ。空力的にはテスラのように、もっとピークを前に持って来たいところを、グッと我慢してスタイルを優先するためにピークを後ろへ移動させている。
しかしそのおかげで、従来のドライバー上にピークがあるデザインの無駄なルーフ高を削れた。前方に置いたピークから、後席頭上へ向かって下降していくラインを描くと、リヤパッセンジャーに必要な空間を確保するために、前席頭上のルーフピークを高くしなくてはならない。
よって、ルーフピークを後退させることで、前面投影面積を減らし、よりバランスの良い前後室内空間がつくれる。空力(リアのリフト)の不利は独特の制流機能を持つアンダーフロア形状でクリアしてくることが予想される。そこはプリウスと同じ手法になるだろう。
何より、このデザインは明確に車両キャラクターの方向性を示している。このカッコで遅い、あるいは鈍重な身ごなしはない。そしてその走りに関しては、新型プリウスと同等以上の仕上がりが期待できるはずである。
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