「いすゞ」に抜かれた日野自動車、過去最大1280億円の赤字 エンジン不正だけではない絶不調の要因:妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(1/3 ページ)
検査不正が発覚して以来、厳しい状況が続く日野自動車。信頼や国内トラック市場シェアトップの座など、失ったものは大きいですが、今後の回復の道筋は見えているのでしょうか。決算書から日本経済を読み解く本連載、今回は日野自動車の現状についてです。
検査不正が発覚して以来、厳しい状況が続く日野自動車。信頼や国内トラック市場シェアトップの座など、失ったものは大きいですが、今後の回復の道筋は見えているのでしょうか。決算書から日本経済を読み解く本連載、今回は日野自動車の現状についてです。
トラック・バスが出荷停止に 業界首位をいすゞに明け渡す
日野自動車は2022年3月、排ガスや燃費に関する性能試験に不正があったと発表しました。調査の結果、03年から継続して不正が行われていたことが発覚し、大きな話題となりました。
中型・大型のエンジンに関して型式認証が取り消されたことに加え、22年8月には小型のエンジンでも不正が見つかり、結果としてほぼ全てのトラックやバスが出荷停止となりました。
23年2月にようやく、再認証を受けた大型トラックの出荷を再開したものの、国内トラック市場の新車販売シェアトップの座は、いすゞ自動車に首位を明け渡すことになってしまいました。
こうした状況の中で、顧客に対する燃費保証や再認証にかかる費用などの特別損失を計上した結果、3月29日に23年3月期の業績見通しを過去最大の1280億円の赤字に下方修正しました。
日野自動車は現在、財政的にはどのような状況なのでしょうか。まずはここ数年の業績の推移から見ていきます。
コロナ禍に検査不正のダブルパンチ 復活は遠い?
売上高の推移を見ていくと、20年3月期以降は下落した状況が続いています。21年3月期に関しては、コロナによる市場の縮小の影響を受けています。
22年3月期には市場は回復したものの、北米における売り上げが大きく悪化してしまっています。米国市場では、日本での不正問題とはまた別で、米国の法定認証試験で生じた問題によって、21年9月まで車両生産を停止していました。その結果売り上げの減少が続いていたのです。
営業利益に関しても、売り上げの悪化を受けて20年3月以降は減少した状況が続いています。
純利益についても20年3月期以降は悪化の一途をたどっており、23年3月期に関しては847億円もの赤字となってしまっています。北米での生産停止に関する認証関連損失と、22年3月に公表した国内の不正に関する損失を計上した影響が大きかったようです。
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