「東急の自動運転バス」実証実験2回目、真の目的と課題が見えた:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/6 ページ)
東急と東急バスが、3月に多摩田園都市エリアで自動運転バスの実証実験を行った。2回目の実験で、今回は新たなルート。一般試乗客を募り、LINEでの予約システムの実験も行われた。安心・安全を強化するため、車内外の遠隔監視システムの運用実験も行われたが、サービス提供にはまだ課題がある。
運行開始前に予約で満員、「普段使い」は厳しいかも?
今回は体力が整わず、全区間を確認できなかった。もしかしたらキャンセルが出て乗れるかと思ったけれど、やはり満席。「すすき野とうきゅう」前の交差点でしばらく待っていると、前回と同じ小さなバスがやってきた。どんな人が乗っているだろうと思ったら、全員がスーツ姿だ。あれ、買い物客らしき乗降客がいない。そして空席もある。これは定員を少なめに設定しているためだ。無料乗車の実験だからこれでもいいけれど、ビジネスだったらもったいない。
この実証実験の実態はどうだったか。東急に問い合わせた。
――ほぼ毎日、午後の便だけ確認したらいつも満席でした。予約がすべて埋まったのはいつでしたか。当日も予約できる状況でしたか?
東急: 予約開始が3月1日でした。3日まででほぼ満席となりました。
――最終便はスーツ姿の方が乗られていました。一般客は乗れない便だったのでしょうか。
東急: 近隣の方に早く、多くご乗車いただきたいという主旨で、関係者はなるべく最終日へ案内しました。そのため、最終日はスーツの方が多いと感じられたかと思います。
――実証実験終了後にLINEでアンケートを取られていました。どのような結果でしたか。
東急: 延べ人数では400名を超える方にご乗車いただきました。そのうち一般のお客様が7割、関係者3割です。アンケートは集計中です。担当者が乗車案内した状況からお話しすると、ご家族連れが6割、高齢者のお一人様が4割といったところです。お子様だけの乗車もありました。乗車地の内訳は、過半数が「虹が丘営業所」から。2割が「nexusチャレンジパーク早野」から。1割が「すすき野とうきゅう」とその他という感じです。
――ドライバーへの案内という意味で、すすき野とうきゅう〜ミニストップの区間に前回のような「自動バス運転中」の看板がありませんでした。今回は設置なしの状況で実験しましたか。私の体力の都合でこの区間しか拝見できませんでした。
東急: 全体で4カ所設置しています。すすき野とうきゅう〜ミニストップの区間は設置しておりません。
――乗降場所について立て看板など目印がなく、すすき野とうきゅう店頭にも「自動運転バス実施中」の案内が見当たりませんでした。東急の先進性を地域に伝える良い機会だったと思いますが、今回の実験は「スマートフォンでネットを使える人限定」だったのでしょうか。
東急: バス停などの目印は道路占用許可、道路使用許可など煩雑な手続きが必要となるので、スモールスタートである今回の実験では立てておりません。告知は、まず、すすき野とうきゅう、あざみ野東急ストアにはチラシを設置しました。初日にはすすき野とうきゅう店舗内に係員を配置し、近隣住民向けに自動運転バスの告知も行いました。
さらに、すすき野連合会長、虹が丘1〜3丁目自治会長、虹が丘3丁目町内会長、UR担当者へ説明し、団地にチラシの回覧、掲示板への掲示、一部の地域に全戸配布まで行いました。チラシを見て予約した方が多かったようです。
LINE申込とした理由は、高齢者がどれだけLINEに馴染みがあるかの検証も含めていました。結果として、ご自分で予約した方、息子さんに手伝っていただいた方、予約が分からずに事務局へ電話してこられた方などさまざまでした。
――次の実験も期待しています。今後の予定をお聞かせください。
東急: 今回の検証を踏まえて、同地域で再度実施するか、または別の地域で実施するかなどを検討してまいります。同じことを単純に別なところで実施してもあまり得られる効果は少ないと思いますので、自動運転に関する法的なことも考慮しながら、次のステップを見据えていきたいと考えております。
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