「吉野家」の看板メニュー「牛丼」誕生秘話 120年の歴史で具材も変化:「すき焼き」と同じ源流?(2/2 ページ)
国内で約1200店舗を展開する外食チェーン「吉野家」の代表的メニュー「牛丼」。誕生の経緯を広報に聞いた。
当初は「焼き豆腐」「たけのこ」も入っていた
松田氏が「吉野家」として店を始めたのは、ちょうどその頃だった。「庶民が好む『牛めし』をもっと美味しく提供できないか」──。松田氏は、白米にかける丼飯の形式はそのままに、上質なバラ肉を使って味の完成度を高めた。当時の牛丼には、現在の牛肉と玉ねぎに加え、たけのこや糸こんにゃく、焼き豆腐なども入っていたという。
上等な有田焼の丼ぶりに入れて提供したことから「牛丼」と名付けられたそのメニューは、魚河岸で働く男たちの間で瞬く間に評判に。牛丼に赤い紅生姜を添えた粋な色合いも“江戸っ子”たちに好評だった。仕事の合間にさっと丼をかっこみ、滋味あふれる味に舌鼓を打ち、満足げに帰っていく男たち。いつしか牛丼は魚河岸労働者にとって不可欠な存在となった。
その後、1923年の関東大震災を機に、魚河岸が日本橋から築地に市場移転。吉野家も店舗が焼失したことから、築地に移転し、3年後の26年に営業を再開した。35年には中央卸売市場開設に合わせて、市場内に店舗を開店。築地の店舗は太平洋戦争中の東京大空襲で再び焼失の被害を受けたものの、2018年10月の築地市場閉場まで営業を続けた。
吉野家「毎年のようにブラッシュアップ」
吉野家は近年、唐揚げなど牛肉以外のメニューも強化するなど事業に多少の変化が生じている。だが、同社を日本を代表する外食チェーンに押し上げた原動力は紛れもなく牛丼だ。同社は祖業である牛丼について公式Webサイトでこのように言及している。
「創業からこれまで毎年のように牛丼のブラッシュアップを重ねている。本部では、原材料すべての品質や安全性を確保し、製造部はベストな食材の状態などを追求し続けている。たれの配合なども研究の手を怠らない」
2024年で創業125年を迎える同社のアイデンティティともいえる牛丼。125年目の味に注目が集まりそうだ。
関連記事
- ソニーの「着るエアコン」“バカ売れ” 猛暑追い風に「想定以上で推移」
連日の猛暑が続く中、ソニーグループ(ソニーG)が4月に発売した、充電式の冷温デバイス「REON POCKET 3」(レオンポケット3)の売れ行きが好調だ。同製品は「着るエアコン」とも呼ばれており、ビジネスパーソンを中心に売り上げを伸ばしている。 - ファミマの「生コッペパン」1000万食突破 ヒットの要因は“古臭さ”払拭にあり
ファミリーマートが手掛ける「生コッペパン」シリーズの販売が好調だ。同社によると、2月末の発売から20日間で1000万食を突破。なぜ、生コッペパンシリーズを商品化したのか。経緯とヒットの理由を同社広報に聞いた。 - 「スシロー」はなぜ、“食器舐め”本人の謝罪を拒否したのか 広報に聞いた
回転寿司チェーン「スシロー」の店内で、客が卓上の醤油ボトルや湯呑みを舌でなめる動画をSNSに投稿し、物議を呼んでいる。被害を受けたスシローの運営元あきんどスシローは迷惑行為に「刑事、民事の両面から厳正に対処する」との声明を発表。厳格な姿勢を示し、ネット上で賞賛を浴びている。スシローはなぜ厳しい姿勢を貫くのか。理由を広報に聞いた。 - 「楽天モバイル」はなぜ苦戦しているのか 背景に4つの誤算
2022年12月期決算で、過去最大の3728億円の赤字を計上した楽天グループ。その要因はモバイル事業「楽天モバイル」だ。なぜ苦戦を強いられているのか。筆者が考える三木谷構想4つの誤算をひも解く。 - 「工場の製造が追い付かない」──ファミマの「クリームパン」、4週間で650万個販売 好調の理由を広報に聞いた
ファミリーマートが発売した「ファミマ・ザ・クリームパン」の売れ行きが絶好調だ。販売開始から8日で、クリームパン単体で220万個を売り上げた。1秒に3個売れている計算で、工場の生産が追い付かず、品薄になっているとして、一部の店舗では“お詫び”の掲示物をするほどだ。なぜここまで売れているのか。好調の要因を同社広報に聞いた。 - 「生クリーム好き歓喜」──セブンイレブンの“具なし”「ホイップだけサンド」に反響 商品化の狙いは? 広報に聞いた
セブン-イレブン・ジャパンが10月12日から近畿エリアなど地域限定で販売を始めた「ホイップだけサンド」シリーズがTwitterで話題となっている。商品名の通り、ホイップクリームのみを挟んだ“具なしサンドイッチ”となっている。商品化の経緯を聞いた。 - 正念場迎える「楽天モバイル」 財務戦略に潜む苦難の実情
2022年度決算で、楽天グループ(以下楽天)は最終損益で4期連続かつ過去最大となる3728億円の赤字を計上。財務状況を分析した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.