auカブコムも対応 ネット証券が「入出金」を無料にする狙いとは(2/2 ページ)
auカブコム証券が入出金に関するサービスの拡充を発表した。ネット振込の提携銀行も追加し、対応するすべての金融機関への出金手数料を無料化している。
次に、出金です。auカブコム証券では、多くの金融機関について営業日の午後1時30分までなら「当日中」の出金が可能となっています。
出金先として登録している楽天銀行の口座に1000円を出金してみたところ、約1時間で楽天銀行の残高に反映されました。これで手数料をかけずに銀行間でお金を動かせたことになります。
出金先の口座はオンラインで変更できます。最近、証券会社によってはセキュリティ対策などの観点からさまざまな制限を課していますが、auカブコム証券では営業日の午前8〜午後8時なら15分ごとに反映されるのである程度柔軟に変更できそうです。
これを活用すれば、利用者は自分の口座間で無料でお金を動かすことができるようになります。ところで、そのコストを負担していると考えられるauカブコム証券には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
auカブコム証券の決算説明会で聞いてみたところ、「たしかに短期的に出金が増えたり、コストが増えたりすることは想定している」(カスタマーサクセス部 部長の小松圭一氏)といいます。
一方で、「他の証券会社の事例として、出金手数料を無料とすることでコスト増を想定していたところ、いつでもお金を出せるからこそ口座にお金を残していただけるという意外なニーズが多かったと聞いている」(小松氏)とのこと。
「手数料無料でいつでもお金を出せるようにすることで、出金もできるが、投資や資産形成にも使っていただけるという両面で利便性を提供していきたい」(小松氏)と狙いを語っています。
その背景として、代表取締役会長兼社長の二宮明雄氏は「目先の収支よりも将来を見据えた先行投資をしている」と説明。スマホ用アプリのリニューアルを含め、「他社と比べて劣後している点を埋め、MUFGとKDDIのジョイントベンチャーとしてのブランド価値を高めるべく、サービスを拡充していく」との方針を示しています。
お金は「動かしやすいところに置く」という発想
お金は動かしやすいところに置く、というのは筆者も個人的に実践しています。楽天証券に入金して楽天銀行に出金するという方法は毎月のように利用しており、米ドルならSBI証券と住信SBIネット銀行の組み合わせが定番になっています。
単に入金と出金をするだけなら証券会社には1円も残りませんが、月に何度もログインすることで画面構成や操作に慣れ、キャンペーンや新商品が目にとまる機会が増えるようにも感じています。
すでにauカブコム証券にはauじぶん銀行の口座と連携できる「auマネーコネクト」があります。さらに今回から他の金融機関にも無料で出金できるようになったことで、「お金の動かしやすさ」競争において確実に存在感を増した印象です。
書き手:山口 健太(やまぐち・けんた)
1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。
ヤフーニュース個人:「ITジャーナリスト2.0 山口健太」
Twitter:@yamaguc_k
公式Webサイト:山口健太
関連記事
- ソニーの「着るエアコン」“バカ売れ” 猛暑追い風に「想定以上で推移」
連日の猛暑が続く中、ソニーグループ(ソニーG)が4月に発売した、充電式の冷温デバイス「REON POCKET 3」(レオンポケット3)の売れ行きが好調だ。同製品は「着るエアコン」とも呼ばれており、ビジネスパーソンを中心に売り上げを伸ばしている。 - ファミマの「生コッペパン」1000万食突破 ヒットの要因は“古臭さ”払拭にあり
ファミリーマートが手掛ける「生コッペパン」シリーズの販売が好調だ。同社によると、2月末の発売から20日間で1000万食を突破。なぜ、生コッペパンシリーズを商品化したのか。経緯とヒットの理由を同社広報に聞いた。 - 「スシロー」はなぜ、“食器舐め”本人の謝罪を拒否したのか 広報に聞いた
回転寿司チェーン「スシロー」の店内で、客が卓上の醤油ボトルや湯呑みを舌でなめる動画をSNSに投稿し、物議を呼んでいる。被害を受けたスシローの運営元あきんどスシローは迷惑行為に「刑事、民事の両面から厳正に対処する」との声明を発表。厳格な姿勢を示し、ネット上で賞賛を浴びている。スシローはなぜ厳しい姿勢を貫くのか。理由を広報に聞いた。 - 「楽天モバイル」はなぜ苦戦しているのか 背景に4つの誤算
2022年12月期決算で、過去最大の3728億円の赤字を計上した楽天グループ。その要因はモバイル事業「楽天モバイル」だ。なぜ苦戦を強いられているのか。筆者が考える三木谷構想4つの誤算をひも解く。 - 「工場の製造が追い付かない」──ファミマの「クリームパン」、4週間で650万個販売 好調の理由を広報に聞いた
ファミリーマートが発売した「ファミマ・ザ・クリームパン」の売れ行きが絶好調だ。販売開始から8日で、クリームパン単体で220万個を売り上げた。1秒に3個売れている計算で、工場の生産が追い付かず、品薄になっているとして、一部の店舗では“お詫び”の掲示物をするほどだ。なぜここまで売れているのか。好調の要因を同社広報に聞いた。 - 「生クリーム好き歓喜」──セブンイレブンの“具なし”「ホイップだけサンド」に反響 商品化の狙いは? 広報に聞いた
セブン-イレブン・ジャパンが10月12日から近畿エリアなど地域限定で販売を始めた「ホイップだけサンド」シリーズがTwitterで話題となっている。商品名の通り、ホイップクリームのみを挟んだ“具なしサンドイッチ”となっている。商品化の経緯を聞いた。 - 正念場迎える「楽天モバイル」 財務戦略に潜む苦難の実情
2022年度決算で、楽天グループ(以下楽天)は最終損益で4期連続かつ過去最大となる3728億円の赤字を計上。財務状況を分析した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.