ジャニーズ事務所はどうなる? 企業が「昔の問題」をウヤムヤにする方法:スピン経済の歩き方(3/7 ページ)
ジャニーズ事務所が揺れている。英BBCのドキュメンタリー番組に端を発した性加害疑惑について、藤島ジュリー景子社長が見解を発表した。組織へのダメージを少なくして、逃げ切る作戦に打って出たようだが、うまくいくのだろうか。ジャニーズ側は大きな不安要素を抱えていて……。
逃げ切る作戦
では、一般的な日本企業はどうやってこの問題を乗り越えていくのか。筆者のこれまでの経験から言わせていただくと、基本的には「個人犯罪へ矮小化して、組織へのダメージを最低限に抑えて逃げ切る」という戦い方しかない。
つまり、過去の不正というのは、それを行った経営者・創業者や現場の社員たちが自分の独断で勝手に行ったことであって、会社としてはこれに全く関わっていないことを主張して、いわゆる「トカゲの尻尾切り」で組織の責任をウヤムヤにする作戦だ。もちろん、会社としては全く非がないということでもなく、「そのような不正に気付かなかったのは会社の責任だ」と真摯(しんし)に謝罪する。
しかし、このような方向の謝罪ならば、今の経営者を守ることができる。「個人犯罪を二度と起こさないためにガバナンスを強化します。その改革を進めていくことが私の責務です」なんて言って、社長の立場にとどまる「大義名分」ができるからだ。
ここまで言えば、カンのいい方はお気付きだろう。これはまさしく今、ジャニーズ事務所がとっている危機管理スタイルだ。
藤島ジュリー景子社長は動画や文書で、叔父であるジャニー喜多川氏の性加害については、「知らなかったでは決してすまされない話だと思っておりますが、知りませんでした」と述べた。
ジュリー景子社長によれば、「長らくジャニーズ事務所は、タレントのプロデュースをジャニー喜多川、会社運営の全権をメリー喜多川が担い、この二人だけであらゆることを決定」していたという。「本件を含め、会社運営に関わるような重要な情報は、二人以外には知ることの出来ない状態が恒常化」し、取締役会が開催されたこともないジャニーズ事務所のガバナンスを「異常」だと言い切った。
良い悪いは別にして、これは企業危機管理としては極めて真っ当な手法だ。
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