ジャニーズ事務所はどうなる? 企業が「昔の問題」をウヤムヤにする方法:スピン経済の歩き方(4/7 ページ)
ジャニーズ事務所が揺れている。英BBCのドキュメンタリー番組に端を発した性加害疑惑について、藤島ジュリー景子社長が見解を発表した。組織へのダメージを少なくして、逃げ切る作戦に打って出たようだが、うまくいくのだろうか。ジャニーズ側は大きな不安要素を抱えていて……。
組織の問題を個人の問題に
BBCの報道が海外でも注目を集めて、被害者が名乗りでているこの問題は、もはや「ジャニー氏が亡くなったので真相が分からない」では逃げ切ることはできない。しかし、企業イメージ的にも「性加害」の事実を認めることはできない。
そうなると、残された道は「もしかしたらそういう問題もあったかもしれないけれど、ジャニー氏がやりたい放題やっていた異常な組織だったので、私たちはまったく分かりません」というストーリーを訴求していくしかない。
日本のエンタメ業界では「枕営業」なんて言葉があるように、権力者が若い女性や男性にセクハラやグルーミング(わいせつ目的で相手を手なずける、懐柔行為)することはそこまで罪は重くないが、ハリウッドではそういうことをしたプロデューサーが数十年前の行為を告発されて「追放」されているように、海外では一発アウトの犯罪案件だ。
つまり、もしカリスマ創業者の性加害を組織全体で黙認していたなんてことになれば、海外ならば事務所ごと業界から永久追放されるような話なのだ。だから、ジャニーズ事務所としては組織の存続のためには、「ジャニー氏がそんなことをしていたとは知らなかった」というストーリーを絶対に死守しなくてはいけないのだ。
そのために一番効果的なのは、ジャニー喜多川氏とメリー喜多川氏という共に鬼籍に入っている故人2人を「悪役」にすることだ。死人に口なしではないが、今起きている問題の原因をこの2人にすべて被せれば、藤島ジュリー景子社長以下、残った幹部社員たちは「巨大な権力者に逆らえなかった善意の人々」となれるのだ。
このように発覚した不正や違法行為を、組織由来の問題ではなく、「個人犯罪」へと矮小化させていくというスタイルの戦い方は、企業危機管理においては非常にベーシックな手法だ。モラル的な問題は多々あるが、実際に一部の企業ではそれなりの成果を収めている。
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