人気ゲーム「艦これ」 なぜ10年も続く(2/3 ページ)
人気ゲーム「艦隊これくしょん―艦これ―」が、サービス開始から10周年を迎えた。基本利用料無料の競争はスマホゲームを中心に激しく、人気作でも淘汰される時代だが、「艦これ」はなぜここまで続いているのか。
シンプルながら奥深いゲームシステム
2つ目の理由は、ゲーム自体が面白いことでしょう。システムはシンプルでありながら奥深いのです。
プレーヤーは原則6隻(イベントなどでは最大12隻も)で艦隊を編成し、「進軍」と「撤退」こそ選べますが、操作時のテクニカルな指さばき、瞬間的な判断は求められず、じっくり考えられます。その代わり、ターゲットにする敵を選べず、強力な攻撃が出るかもやってみないとわからず、ただ見守るだけです。運に左右されるのは確かで、さらに自身のキャラに無理な進撃をさせて敵に倒されてしまうと「轟沈」し、二度と復活しません。
ただし運に左右される要素があるからこその「面白さ」があります。野球やサッカーの監督のような立場といえば、理解しやすいのではないでしょうか。そして勝利の確率を少しでも高めるため、準備が重要になるのです。
まずステージの特性を踏まえ、艦艇の種類、キャラのレベル、能力などさまざまな要素を考慮して誰を起用するか。編成の順番、装備などで結果がガラリと変わります。強敵が立ちはだかる期間限定イベントでは、自分の艦隊の実力を判断して、難易度を落とす、レベル上げをするなどの対応を迫られる必要もあります。逆に、強敵を相手に試行回数を増やしてイチかバチかの突破を目指す作戦もありでしょう。
さらに言えばゲームの仕組みの基本的な説明はあるものの、判然としない部分もあり、それゆえ手探りになることもあります。熟練プレーヤーや有志による攻略・分析サイトも充実していますが、自分の艦隊の力量を踏まえて、臨機応変に変えることも必要です。手ごわいゲームを求めるプレーヤーの要望に応えているともいえます。
課金を避けるよう促す文言も
3つ目の理由は、ユーザーに配慮した課金システムです。多くのスマートフォン用ゲームは、ガチャを活用して、課金を促す仕組みになっていますが、「艦これ」は、課金を避けるように促す文言があったりします。実際、無課金でかなり遊べるのです。
では「どこで課金を?」と言えば、基本的にゲームにかなり熱中してから、より快適に遊ぶためにする形でしょうか。具体的には、修理時に必要なドックの数を増やす、キャラの装備枠を一つ増やす「補強増設」、キャラの限界レベルを引き上げる「ケッコンカッコカリ」などです。いずれにしても、10年前は、今よりも課金に対する忌避感がありましたから、運営側から「(無理な課金を)避けてほしい」と明言するのは、ユニークでした。
なおイベント時には、新キャラやレアなキャラも手に入りますが、出撃を繰り返して敵を倒す……という「ゲームをきちんと遊ぶこと」が求められます。課金だけにものを言わせることが難しいのです。
ビジネス視点であれば、新キャラと課金(ガチャ)をもっと連動させる方が得策なのですが、そうなっていないのです。多くのスマホゲームは「いかに収益を上げるか」という方向性があるのですが、「艦これ」は、課金はほどほどでよいから、長く遊んでほしい……という、一貫した“哲学”を感じます。
近年は豪華なグラフィックを押し出すスマホゲームが増えています。その中で人気になるには、そのゲーム(商材)が時代の消費者が求めるものかという要素もあるのは確かですが、まずはゲームそのものが面白いこと。かつキャラの魅力が立っているか。ファンを楽しませる運営ができているか。その重要性を示唆しています。
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