つんく♂に聞く「生成AIと音楽ビジネス」の未来 ヒット曲を生むための3つのヒント:つんく♂×AI研究者【前編】(1/4 ページ)
作曲家、作詞家、音楽プロデューサーでありTNX社長のつんく♂氏と、AI研究者で、音楽生成AIを使ったアプリを制作するDataPOP社長の酒巻隆治氏に、「AIと生成AIと音楽ビジネスの未来」をテーマに対談してもらった。
ChatGPTなどの生成AIが、世界の産業構造を根底から変えようとしている。業務効率を飛躍的に上げる生成AIは個人や企業だけでなく、国の競争力にもかかわる「新しいAI時代」の到来をもたらした。岸田文雄首相はAI戦略会議を新設。G7広島サミット2023でも生成AIを議題に上げ、その活用を巡る国際ルール作りなどに向け、年内に結論を得ることを目指している。
テクノロジーの発展は、表現の世界にも劇的な変化をもたらしてきた。
今では誰もがスマートフォンで撮影した写真や画像をSNSで気軽にシェアしている。かつてフォトグラファーやイラストレーターといったクリエイターの専売特許だった写真や画像が、技術によって広く民主化された形だ。
今後は生成AIを使って作成した画像を使用する人や、自社コンテンツとして使う企業も増えるだろう。まさに、誰もがクリエイターになれる「1億総クリエイター」時代が幕を開けようとしている。
だが、現在でもプロと一般人との間に圧倒的な技術的ハードルがあるのが音楽の業界だ。ビートルズの元メンバー、ポール・マッカートニー氏は同バンドの「最後の楽曲」となる新曲をAIによって制作し、今年リリースすると発表。話題を集めている。
一方で米グーグルは2月、文章から自動で作曲をするAI「MusicLM」を発表した。だが現時点ではプロが音楽生成AIをピンポイントで使用することはあっても、誰もが作曲できる時代が到来したとは言えない。作曲をするには高度な技術が必要で、プロとの溝はまだまだ深いからだ。
今後、音楽ビジネスの世界で生成AIはどのような未来を描いていくのか。
日本を代表する作曲家、作詞家、音楽プロデューサーでありTNX社長のつんく♂氏と、AI研究者で、音楽生成AIを使ったアプリを制作するDataPOP社長の酒巻隆治氏に、「生成AIと音楽ビジネスの未来」をテーマに対談してもらった。
果たして生成AIを通じて誰もが作曲できる社会は来るのか。AIはヒット曲を生み出せるのか。2人の対談から3つのヒントをお伝えする。
つんく♂ 総合エンターテインメント株式会社<TNX株式会社>社長、音楽家・エンターテインメントプロデューサー、作詞家、作曲家。1988年シャ乱Qを結成。92年にメジャーデビューし4曲のミリオンセラーを記録。その後「モーニング娘。」をプロデュース。ハロー!プロジェクトを始め数々のアーティストのプロデュースやNHK Eテレ「いないいないばあっ!」を含む数多くの楽曲提供、サウンドプロデュースを手掛ける。プロデュースした任天堂のゲームソフト「リズム天国」シリーズは全世界累計販売本数500万本以上のヒット。著書に「だから、生きる。」(新潮社)。オンラインサロン「みんなでエンタメ王国」オーナー。21年2月に坂本龍一氏との共同制作で小児がん治療支援チャリティーライヴのテーマソング 「My Hero〜奇跡の唄〜」 を発表。21年7月、大阪・関西万博 大阪パビリオン推進委員会スーパーバイザーに就任。『ALL THE SONGS OF つんく♂』が7月21日に発売
酒巻隆治(Ph.D)DataPOP代表、AI研究者。大学・大学院と人工知能の研究室に所属し、KDDI、楽天にて10年をこえる研究職、東京大学、文教大学での非常勤講師などを経て、2014年DATA・AIをビジネス活用する会社を創業。18年社員数120人、年商15億円までビジネスを育て、KDDI子会社に会社売却。19年より会社を新設し、その中で既存法人向けビジネスとともに、個人向けAI活用としてアート・音楽に役立てるよう研究開発を手掛けている。DATA・AIに関する著書6冊。特許を6つ取得。つんく♂氏を審査委員長とした「Cevio AIソングボイス」を使用した楽曲コンテストを7月14日まで開催中。Twitter
その1:「ヒット曲」と「度肝を抜く曲」は別物
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