小売マーケの限界突破か サツドラ、AIカメラ×広告で売上が1.6倍に:新しい店舗体験(2/3 ページ)
北海道内で2位の店舗数を誇るサッポロドラッグストアは、新しい店舗体験の構築に乗り出した。AIカメラでの取得データとPOSデータを掛け合わせた広告を展開している、新しいチャレンジを取材した。
AIカメラで「時間、動線、視線」まで記録する
そこでサツドラは正確なデータ取得を目的に、新しいチャレンジに乗り出す。本社機能を備えたサツドラ北8条店を実験店舗と位置付け、20年に顧客導線を分析する84台のAIカメラと映像処理・分析ツール「AWL BOX」を導入。さらに44台のデジタルサイネージにもAIカメラを接続し広告効果を可視化できる環境をつくった。翌年には、サイバーエージェント、AWLと提携し、これらを深化させたソリューションを53店舗に導入した。
顧客の動きを追いかける天井吊り下げ型と、顧客の視線を追いかけるサイネージ連動型の2種類のAIカメラが店内を撮影する。撮影した映像から買い取り導線を記録し、AIが顧客の滞在時間、広告の視聴時間、さらに顧客の性別、年齢など属性も判別する。もちろん個人の特定につながらないよう、会員IDとはひも付けせず、顔画像も保存しないなどプライバシーにも配慮している。
これらの情報とPOSデータをひも付けることによって、サイネージ広告を視聴した人が商品を手に取ったかどうかだけでなく、買ったかどうかまでを顕在化させる実証実験を行っている。
「例えば店舗入り口に置いたサイネージで、ある商品広告を流したとします。サイネージ広告を見たお客さまが商品の棚まで行ったかどうか、そして最終的に商品を買ったか、買わなかったかまで追跡できる仕組みをつくろうとしています」(山本氏)
店内をサッポロビール一色に
実際に、サツドラ店内でサイネージ広告を運用した事例を紹介しよう。Jリーグのサッカーチーム「北海道コンサドーレ札幌」とタイアップした限定企画の缶ビールを年に一度販売しているサッポロビールの事例だ。
従来、ビールは取り扱い品目が多く定番商品の影に埋もれがちであった。しかもアルコール類は店内奥の棚に置かれることが多いため、新製品や企画品であっても気付いてもらえないことも多かった。
そこで、山本氏らはAIカメラのデータとPOSデータをひも付け、ビールを買ってくれそうな顧客の属性を割り出した。すると、ターゲット層は男性が多く、特に夕刻の時間帯に来店していることが明らかになった。
広告はその時間帯に絞って流すこととし、コンテンツにはサツドラでしか見られないコンサドーレ選手の秘蔵映像を採用した。これを北8条店の入口にあるサイネージだけでなく、店内全44台のサイネージで一斉配信したのだ。
「店内の雰囲気が一瞬で変わって、売り場全体に臨場感が生まれた」と山本氏が話すように、消費者の購買意欲が上がり、従来のビールより売り上げが飛躍的に高まったという。SNSとも連動させることで、コンサドーレを応援するサポーターが商品目当てに来店し、店内の雰囲気に魅了されて商品を手に取るという導線を作り上げた。
今回、サッポロビールが使った広告プランは、Satudora InStore Adsと呼ばれるサイバーエージェントと共同開発したもの。22年3月のサービス開始以来、約1年3カ月でSatudora InStore Adsのブランド出稿数はすでに60件以上に上る。
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