芸備線が生き残る道はあるか 今後どうなる?
芸備線を存続させるのであれば「赤字の地元負担」「第3セクター鉄道転換」「上下分離(県・市が固定資産を保有し、JRに運行を委託する)」などの選択肢も残されている。しかし先に述べた通り、線路も古びて、運賃収入も極度に少ない状態では、もはや「危険箇所の改修+上下分離+赤字額負担」くらいの条件がないと、JR西日本を動かせないのではないか。
この状況の中で、どうしても「存続」という答えを引き出すなら、県・市での資金負担、設備改修を前提として「廃止反対」と申し出るほかない。JR西日本との協議がすれ違う背景には「できることは乗車促進だけ。お金は出さないけど、こちらの期待には応えてください」と言っているに等しい、自治体の姿勢にもあるのではないか。
再構築協議会を設けると、国土交通省も交えつつ、沿線自治体とJR間での協議の上で「設備投資などを行った上で存続」「路線バスなどに転換」など、さまざまな選択肢が話し合われる。そして、協議会の期限(3年間)を過ぎると、JR西日本が備後庄原駅〜備中神代駅の一方的な鉄道廃止を表明する事態も、ありえなくはない。
再構築協議会は、1日の輸送密度1000人以下の鉄道路線を優先して設置される。全国各地のローカル線沿線にとっては、ひとごとではないだろう。
議論に挙がる選択肢は「省力化・省人化」「バス・タクシーなどとの連携」「上下分離」「第三セクター転換」「路線バス・デマンドタクシー転換」などさまざま。いずれにせよ、鉄道会社任せではなく、地域の手で交通網を作ることが求められる。そして、その鉄道が必要であれば、国交省が「設備改修などの補助金を検討」などの援護射撃を行ってくれる。
もし対象となった場合は「鉄道存続か? 廃止か?」の一本やり議論にこだわらず、バス・タクシーなど幅広い選択肢を使った地域交通の再構築(作り直し)を「国でも鉄道会社でもなく、我が町のもの」として行っていく必要があるだろう。
宮武和多哉
バス・鉄道・クルマ・駅そば・高速道路・都市計画・MaaSなど、「動いて乗れるモノ、ヒトが動く場所」を多岐にわたって追うライター。幅広く各種記事を執筆中。政令指定都市20市・中核市62市の“朝渋滞・ラッシュアワー”体験など、現地に足を運んで体験してから書く。3世代・8人家族で、高齢化とともに生じる交通問題・介護に現在進行形で対処中。
また「駅弁・郷土料理の再現料理人」として指原莉乃さん・高島政宏さんなどと共演したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」(既刊2巻・イカロス出版)など。23年夏には新しい著書を出版予定。
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