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話し合い拒否で長引く「JR西VS.自治体」の攻防 「乗客1日13人」の芸備線、存廃の行方は?宮武和多哉の「乗りもの」から読み解く(2/3 ページ)

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「バスの方が速い」 選ばれない理由

 普通、鉄道は線路上をクルマより高速で走れるものだ。しかし芸備線・備後庄原駅〜備中神代駅間はこの法則が当てはまらず、道路を走るバスの方が最高速度・移動の快適さ、ともに優れている区間が多い

芸備線
備後落合駅の前後はR200(半径200メートル)クラスの急カーブや崖が多く、制限速度が極端に制限されている

 芸備線は戦前に建設されたこともあり、急カーブが多い。落石の危険がある岩肌の下を、場所によっては最高時速15キロ、ほぼ自転車並みの徐行で抜けていく。特に備後落合駅〜比婆山駅間は5.6キロを15分という安全運転ぶりだ。

 また、徐行の対象となる崖や山肌は、土砂災害による度重なる長期運休の原因となることも多い。19年には「土砂崩れに車両が乗り上げ脱線・運休」という事故が起きたばかりだ。減災化が進まず運休が多いまま放置されたことも、利用者が“芸備線離れ”を起こした原因だろう。

芸備線
芸備線に並行する路線バス。地理院地図より筆者加工

 片や、芸備線と並行する路線バスは、道路の快適さもあって運行はスムーズだ。例えば、東城駅〜備後庄原駅間のバス(広島市内行きの高速バスの区間利用)は、芸備線が北側に大きく蛇行する区間を高速道路でショートカット。鉄道が約100分・乗り換え1回で移動する区間を、半分の所要時間で移動できるとあって、庄原市内への通学にはよく使われている。

 また、街の賑わいが駅から遠いバイパスに移っていることもあり、庄原市中心部、西城地区(旧・西城町)ともに、スーパー・商業施設・病院・学校は路線バスで移動した方が便利なケースが多い。

 先に述べた高校の通学モニター募集の際にも「列車の本数が少ない」「駅と学校・商業施設などが遠い」という声が挙がっており、時間を選んで駅チカの学校に登校して、下校時にはどこかの店でダベッて帰る――ということができないため、鉄道通学が根付かなかったのだろう。

 自治体側では、高校生を対象にした市内移動の定期券(備北交通「ちょこっとパス」1カ月500円)の販売などの施策をとってきた。所要時間や運転本数(特に三次駅〜備後庄原駅〜備後西城駅間は、圧倒的にバスの本数が多い)を考えると「最初から全て路線バスでカバーする」という選択肢も、あるように思えてならない。

芸備線
備後落合駅の近くを通る西城交通バス

 庄原市は、芸備線と並行する備北交通・西城交通のバス路線に、備後庄原駅でのバスロータリーを新設したり、西城町のスーパーに時刻表示モニター付きの待合室を設置したり、利便性に気を配っている。

 鉄道も路線バスも「地域の輸送を担う」役割は同じはず。芸備線の熱心な存続運動と同時に「現状の路線バスで、その役割は担えないのか?」と検討する必要があるのではないか。

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