「タテ型動画」通販アプリ、なぜ人気? 背景に日本の小売りの“弱点”:まるで「TikTok×Amazon」(1/2 ページ)
「7sgood」というアプリをご存じだろうか? 一言でいうと中国発の「タテ型動画の通販アプリ」だ。リリースから1年程度で、累計ユーザー数はすでに100万を超える。アプリが流行った背景には、日本の流通や小売り業における弱点がある。
「7sGood」というアプリをご存じだろうか? 一言でいうと中国発の「タテ型動画の通販アプリ」だ。2022年3月に日本市場向けにリリースし、すでに累計100万超のユーザーを抱える規模になっている。
7sGoodを開発したのはHHO-Limitedというテック系ベンチャー企業だ。代表は元・アリババの陳航(チェン コウ)氏が務める。アリババ在籍時代には月間4億人が使うビジネスチャットアプリ「DingTalk」を立ち上げ、成長させた“やり手”だ。
陳氏はなぜ7sgooodを日本市場に投入したのか。その背景には、日本が抱える製造業と小売業の構造的な“弱点”がある。
「7秒動画」買い物アプリ 日本市場を狙うワケ
7sGoodを開くと、7秒間の商品紹介動画が次々と流れる。使用感はTikTokのそれとほぼ変わらない。ファッションアイテムやメイク用品、キッチン雑貨からおもちゃ、ガジェットまで、約10万点のアイテムを扱っている。
動画で紹介されている商品は、欲しいと思えばすぐに購入できる。画面下のボタンをタップすると商品詳細の画面に推移し、わずか数タップで手続きが完了する。無料配送や翌日配送に対応する商品も多い。
7sGoodでは1日500種類の商品、1000本の紹介動画が新たに投稿される。裏側のシステムではユーザーの動画視聴時間やお気に入り登録、過去に購買した商品など、各種行動データを収集する。データ分析に基づき、ユーザーに見せる動画を調整している。
だが、単に「最適化」しているわけではない。7sGoodのユニークな点は、偶発的な出会いの創出にある。陳氏は「例えばゲームやガジェットが好きな20代の若者に、10回に1回はあえて『有田焼き』を見せる。こういうランダムのある出会いをアルゴリズムで生み出す」と話す。
結果的に「有田焼き」が購入されなくてもよい。良い商品との予想外の出会いや驚きが体験価値を上げ、ユーザーの定着につながるという。
「Amazonのサイトを閲覧しても、日本の大手小売店に足を運んでも、そこには『すでに売れている商品』が大量に並んでいるだけだ。ユーザーが期待する驚きがない」(陳氏)
偶発的な出会いは思わぬところから評価されている。7sGoodのメインターゲットは10〜20代の女性だが、実際は60代以上の利用も多いという。「新しいものには興味があるけれども、若い人並みに街に出て歩き回るほどの気力はない。そういったニーズに応えているのだろう」と陳氏は分析する。
そもそもなぜ、日本市場を選んだのか。陳氏は「日本は、中国と米国・欧州などのグローバルな発展市場への窓口だ」とした上で、日本人が「品質に対する要求が非常に高い」ことを理由に挙げた。
「保守的で変化の少ない日本市場で小売り・流通のデジタル化に成功すれば、今後米国や欧州での展開もより容易になるとも考えた」(陳氏)
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