「タテ型動画」通販アプリ、なぜ人気? 背景に日本の小売りの“弱点”:まるで「TikTok×Amazon」(2/2 ページ)
「7sgood」というアプリをご存じだろうか? 一言でいうと中国発の「タテ型動画の通販アプリ」だ。リリースから1年程度で、累計ユーザー数はすでに100万を超える。アプリが流行った背景には、日本の流通や小売り業における弱点がある。
日本の流通・小売り業界の“弱点”
通常、商品がメーカーから消費者に届くまでには、商社や小売店を経由する必要がある。商品を店頭に並べてもらうためには、バイヤーから選ばれなければならない。ところが、多くのバイヤーは売れるかどうかを「過去の売り上げ実績」で計ろうとする。実績に乏しい中小のメーカーの商品は店頭に並ぶ機会すら与えられない。
陳氏は「日本の中小メーカーは素晴らしい技術を持っている」と評価しつつ、「流通のデジタル化・効率化は世界に遅れている」と指摘する。7sGoodでは中間業者を最小限にし、メーカーと消費者をダイレクトにつなぐ。メーカーの負担となる在庫数も必要最小限で済むよう、商品が売れる数をAIで計算し、最低限の数だけ製造を依頼しているという。
商品の動画作成、テスト、アップロード、動画公開後の効果検証、コンサルティングは全て無料で提供している(※23年9月時点)。
陳氏は7sGoodの立ち上げ前に、ペット向けスマートロボットやBluetoothイヤフォンなどのプロダクト開発やクラウドファンディングに着手してきた。複数のプロジェクトで1500万〜2000万円を調達するなど、「ものづくりと魅力的な見せ方」のノウハウを蓄積してきた。こうしたノウハウを中小メーカーに提供しようというのが、7sGood立ち上げの目的の一つだ。
今後の展望をどのように描くのか。陳氏は「まずは全世界のユーザーにこの新しい仕組みを届けたい」とし、最終的には10億DAU(デイリーアクティブユーザー)を目指すと意気込む。
「日本のものづくりの技術や品質は世界に誇れるほど素晴らしい。一方で、流通システムの遅れは致命的だ。7sGoodを通じて日本のものづくりでDXを促進し、世界への進出を後押ししたい」(陳氏)
関連記事
- ネコ型配膳ロボットが、日本市場で急成長できた3つの理由
ファミレスなどでよく見かけるようになった配膳ロボット。トップシェアを誇るのが、すかいらーくグループなどが導入するPudu Roboticsのロボットだ。日本法人の設立からわずか2年で7500台を販売し、清掃ロボットも来年までに3000台という販売目標を掲げる。同社の急成長の理由は何か――。CEOの張涛氏に聞いた。 - コンビニに「冷凍おにぎり」がズラリ――ローソン新戦略、背景に物流危機
ローソンは8月22日、「冷凍おにぎり」の実験販売を開始した。コンビニで販売するおにぎりが、客に冷凍商品として受け入れられるかを検証する。冷凍おにぎりを提供するメリット、狙いとは。 - 駅構内の「びゅうプラザ」全て閉店→オンライン化へ 苦悩を越えて得た「逆算のDX思考」
JR駅構内に存在していた「びゅうプラザ」。現在は姿を消し、旅行商品の売り場はオフラインからオンラインに移っていった。オンライン上で蓄積されるデータを活用できるようになるまでの苦労や社員の意識変化について、JR東日本びゅうツーリズム&セールスに聞いた。 - 「カタカナ用語やめて!」 デジタル戦略へ強い忌避感、カインズはどう乗り越えた?
「よく分からない」「気持ち悪い」――ホームセンター大手のカインズがデジタル戦略に舵を切るまで、デジタル全般に対してこうした苦手意識が組織全体にあったという。カインズはどのようにしてデジタルへの苦手意識を乗り越え、「IT小売業」として生まれ変わったのか。 - メタバースの「残念な現実」 日本のアパレルが総崩れする前に直視すべきこと
2021年末ごろから急速に加熱したメタバースブーム。新しい消費の在り方として注目を集める一方で、本質を見極めないまま参入し、失敗する企業が後を絶たない。アパレル業界はメタバース市場とどう付き合うべきか。河合拓が「夢と現実」を指摘する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.