営業利益62% 時価総額2兆円超のモンスター企業「OBIC」のビジネスモデルを分析:勝手に考察!「隠れ優良企業」のビジネスモデルに学ぶ(2/3 ページ)
ERP「OBIC7」を提供するSIerであるOBIC社、実は同業の富士通やNTTデータの利益率を大幅に上回る「62%」を記録しています。時価総額2兆円超のモンスター企業のビジネスモデルに迫ります。
OBIC社のビジネスモデルを読み解く
OBIC社の収益源は3つあります。まずは基幹ERPパッケージであるOBIC7を販売するSI事業。それを保守メンテナンスするSS事業。そして、オフィス・サプライやオフィス関連商品を販売するOA事業です。
収益の大部分はSI事業とSS事業から創出されています。いずれの事業もいわゆる積み上げの継続売上になるため非常に安定した業績につながります。
ここから、OBICのビジネスの特徴をさらに読み解いていきます。
(1)富士通、NTTデータ超えの圧倒的な利益率
同社のビジネスモデルとしての特徴は、なんといっても「業界特化×ERP」という点でしょう。
一般的に基幹システムを提供するSI事業というのは顧客の状況を把握し、個社ごとの要件定義→開発という完全オーダーメイドです。そのためSI事業というのは、一般的に利益率が高くありません。例えば日本を代表するSI事業者である富士通、NTTデータをとっても営業利益率はいずれも10%未満です。
しかしオービックは、事前に各業界に必要な機能をパッケージとして先に用意しておくことで、この問題を解決しています。同社の公式Webサイトを見ると下記のように業種ごとに機能パッケージが用意されていることが分かります。
ニッチな業界でいうと「自動車教習所用パッケージ」などもあります。教習所は日本全国に1000拠点強しかありません。それでもパッケージ化の対象にしているのはなかなかすごいですよね。その結果として「営業利益60%超え」というおそろしい数値を叩き出しています。
先に必要な機能パッケージを拡充するための開発が発生するため、当初はそこまで高い利益率は望めません。しかし、必要機能をある程度拡充し終えたらそこからは大きな開発コストが発生することはないため、各業界で浸透し実績が積み上がっていく。その結果、営業・マーケティングコストが下がります。これをさまざまな業界で繰り返し現在に至るのであろうと思います。
(2)「新卒採用のみ」で構成される組織
OBIC社は2000人近い社員を抱える会社ですが、中途採用を受け付けていません。新卒採用のみで上記の業績を叩き出しています。
前述の通り、もともと同社の事業はシンプルに「仕入れて売る」でした。このときは、いわゆる営業力のある人材が活躍するわけですが、「ERPの開発/販売会社」へシフトするタイミングで求められる能力が変わりました。
ERPの領域では会計や労務などの専門知識が欠かせません。また、そうした一般的な知識に加えて、業界特有の業務や習慣の理解も等しく重要です。こうした特定領域に対する理解は一朝一夕で手に入るものではありません。業界との長い付き合いを続けながら業務と、それを支援するシステムの勘所を把握し、商品をブラッシュアップ/パッケージ化するわけです。
ですので、それを実行する人材ができるだけ長く組織にとどまり、ナレッジが蓄積されるようにしなければいけません。OBIC社は新卒採用にこだわり、入社後も徹底した教育を施すことによって上記を可能としています。
ちなみに、SI大手の富士通やNTTデータと比較しても給与の高さが目立ちます。22年3月期の平均年収は富士通が879万円、NTTデータが867万円に対し、OBICは1006万円となっています。
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