マーケ施策の効果測定前に「失敗が確定」なぜ起こる? 効果測定の罠を知る:トライバルメディアハウスのマーケ戦略塾(3/4 ページ)
マーケティングの現場ではさまざまな問題が発生します。今回は、マーケティング施策の効果測定前にすでに「失敗が確定」してしまっている実情について、そのワケを解説していきます。
効果測定の前に診断と処方の正しさを検証しよう
このようなさまざまなズレが、全国津々浦々のマーケティングの現場で毎日大量に発生しており、そのたびに一生懸命仕事に取り組んだ関係者の落胆と断罪が行われています。
「話題の◯◯に取り組んだのに、全然売り上げが伸びないじゃないか!」「期待する成果が得られずガッカリだ」「◯◯(施策)なんてやるだけ無駄だった」といった「解釈」の多くは、薬(施策)のせいではありません。大半がそもそもの問題、つまり診断と処方の間違いから生まれています。
これら全ての問題を解決するのは容易ではありませんが、「ちゃんとした知識」を身に付ければ、これらの不幸は確実に減らせます。
「失敗」はKGI設定の間違いから生まれる
「なんだよ! 全然効かなかったじゃん!」という「誤った解釈」は、KGI設定の間違いから生まれることが少なくありません。解釈は対目標の予実(予定と実績の差)によって行われますが、そもそも目標自体が間違っているケースが多いのです。
説明書に「この頭痛薬は服用後30分で効き始めます」と書いてあり、そしてそれをしっかり読んで正しく理解していれば、30分後に効き始めたかどうかで効能効果を判断できます。しかし、マーケティングコミュニケーションの施策には、効能効果が明記された確たる説明書は存在しません。バズマーケティング、インフルエンサーマーケティング、コンテンツマーケティング、SNSマーケティング、ファンマーケティングなどの手法には「何ができて」「何はできないのか」や、客観的事実に基づく効能効果が示された説明書がないのです。
説明書がないのは新しい手法だけではありません。多くの企業が数十年にわたって使用しているテレビCMのような伝統的な手法も同様です。いまだに「テレビCMを打ったのに売り上げがあがらない」と、広告効果とマーケティング効果を混同した解釈ミスがそこかしこで起こっています。
当たり前の話ですが、「それぞれの施策のKGI」は「その施策(薬)の効能効果(できること)」と「完全一致」している必要があります。テレビCMなら認知度、パブリシティなら興味喚起・好意や信頼度、リスティング広告なら「いますぐ客」の獲得効率といった具合です。
それぞれの施策に明確な説明書がない以上、各社、各部署、各個人が施策の成果を正しく解釈するためには、それぞれが正しい知識を身に付けるほかありません。それぞれの薬(施策)の効能効果、つまり「できること」と「できないこと」は、第6回「マーケ課題に「万能薬」はない なのに「病気を特定」できない企業が多すぎる」で示したマーケティングコミュニケーションのファネルマップにまとめた通りです。この薬は何に効くのか、そして何には効かないのか、これから施策を検討する際に参照してください。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「USPがUSPではない問題」 マーケ戦略の落とし穴、誰にとってユニークなのか?
マーケターの基本である「誰に」「何を」「どのように」伝えるか、がハマっていない事象をよく目にします。なぜ起こってしまうのか? 原因は「USP」にあることが多いです。
マーケ課題に「万能薬」はない なのに「病気を特定」できない企業が多すぎる
ビジネスの現場では「マーケティング課題と解決策が合致していない」状況にしばしば遭遇することがあります。なぜこのようなすれ違いが発生してしまうのか? 病気と流行り薬の関係性になぞらえて解説します。
マーケ戦略を「絵に描いた餅」にしないための4要素 KPIツリーに沿って考える
マーケティング戦略が「絵に描いた餅」になりがちなのには理由があります。良いマーケ戦略に必要な4つの要素と、KPIツリーの考え方を解説していきます。
チームのKGIを「売り上げ」に設定してはいけない では、何が適切か?
今回はチームのKGIを「売り上げ」に設定すべきではない理由について解説していきます。売り上げはあくまで「結果」だからというのが筆者の考えですが、ではKGIには何を設定すればよいのでしょうか?
マーケ戦略の良し悪しは「何で」決まるのか? 「筋の良い戦略」が描けない理由
「思うように売り上げが上がらない」――その悩みの背景にはマーケティング戦略が論理的に組み立てられていないことがあるのではないでしょうか? マーケ戦略策定に潜む10の落とし穴とその解決策を解説していきます。