マーケ施策の効果測定前に「失敗が確定」なぜ起こる? 効果測定の罠を知る:トライバルメディアハウスのマーケ戦略塾(4/4 ページ)
マーケティングの現場ではさまざまな問題が発生します。今回は、マーケティング施策の効果測定前にすでに「失敗が確定」してしまっている実情について、そのワケを解説していきます。
「売り上げに効く薬」は存在しない
この世には「どんな病気も一発で治せる万能薬(どんなマーケティング課題も一発で治せる万能施策)」など存在しないため、病気を治すためには「病気を正しく診断」し、「その病気を治せる最適な薬を飲む」しか方法はありません。
頭痛を治すための頭痛薬、胃痛を和らげるための胃腸薬はあっても、「健康になるための“健康薬”」は存在しません。つまり「認知度向上に効く薬」「興味喚起や好意度の向上に効く薬」「いますぐ客の集客に効く薬」はあっても「売り上げに効く薬」は存在しないのです。
拙書『売上の地図』で示した通り、売り上げに影響を与える要因に、売り場や想起、プレファレンス(価格、ブランドエクイティ、製品パフォーマンス)、広告、PR、ソーシャルメディア(UGC、レビュー、インフルエンサー)、検索、オウンドメディア、販促、販売員、それ以外にもロイヤルカスタマーの顧客基盤、流行、景気や天候や気温などさまざまです。これらの変数が複合的な入力構造を形成し、最後に売り上げという最終出力が行われます。
つまり「健康な体(=売り上げ)」は「各所で飲む複数の薬(=施策)」が構造的に効いた結果として得られるのです。
消費者が広告で商品を認知し、購入意欲が湧いて売り場に足を運んでみても、商品が置いていなければ買えません。パブリシティに触れて興味が湧き、試しに買ってみてもおいしくなければリピート売り上げにはつながりません。ECでの検索順位が低ければ見つけてもらいにくいし、欲しくても価格が高ければ買われません。レビューが少なければ人気がないと思われ、評価が低ければトライアル購入率も低くなります。自社がどんなに頑張っても競合が強ければ買ってもらえないですし、景気が悪ければ売り上げは増えません。
繰り返しますが、この世に「健康になる健康薬」がないように「売り上げが伸びる売上薬」もありません。あるのは、個別の病気(=マーケティング課題)に効く薬だけです。
だからこそ、ピンポイントで病気を突き止める正しい診断が最重要なのです。「なんだか体調が悪いようですね(≒売り上げが伸びていないようですね)」といった「ざっくりした診断」ではピンポイントでの(真に正しい薬の)処方を行うことができません。
診断の精度は「特定の病気を治す薬」と同じ解像度まで上げる必要があります。「風邪→風邪薬」ではなく、「風邪→喉? 咳? 痰? 鼻水? 鼻詰まり? 熱は? お腹の調子は? いつから?」くらいはブレイクダウンし、ピンポイントで効く薬を飲んだ方が早く良く効きますし、効果を測定するのも簡単です。
次回は、マーケターの思考が「今期の売り上げ最大化=短期的な販促施策」に偏っている問題について解説します。
著者紹介:株式会社トライバルメディアハウス代表取締役社長 池田 紀行
1973年横浜生まれ。マーケティング会社、ビジネスコンサルティングファーム、マーケティングコンサルタントなどを経て現職。大手企業300社以上の広告宣伝・PR・マーケティングの支援実績を持つ。宣伝会議マーケティング実践講座 池田紀行専門コース、JMA(日本マーケティング協会)マーケティングマスターコース講師。 年間講演回数は50回以上で、延べ3万人以上のマーケター指導に関わる。近著『売上の地図』(日経BP)、 『自分を育てる働き方ノート』(WAVE出版)ほか著書・共著書多数。Twitter:@ikedanoriyuki
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