“パクリ疑惑”続出のSHEINを、なぜ日本の若者は支持するの? ユニクロが訴訟を起こした根本的理由:磯部孝のアパレル最前線(2/7 ページ)
ユニクロは1月16日、模倣商品の販売停止などを求めて、SHEINブランドを展開する3社を提訴したと発表した。パクリ騒動が後を絶たないSHEINはなぜ、若者に支持され続けているのか。
ミレニアル世代が支持する「令和のバーキン」
Lystの発表資料によれば「同バッグは20米ドル以下で売られており、われわれのランキングに登場したアイテムで史上最安値」で、日本での販売価格は1500円となっている。ユニクロのプライスラインだと1990円では高いと感じてしまう人も多いと予測し、買ってもらいやすい価格の限界安値として打ち出したそうだ。世界的なインフレが続く中、誰でも手に取りやすい価格設定というのもヒットした理由の1つだろう。
ちなみにラウンドミニショルダーバッグは22年、コロナ禍で大ヒットしたPRADAのナイロンバッグ「Re-Edition」に影響されたとも言われている。「消毒液を持ち歩く」という新たなニーズを満たしたRe-Editionがヒットすると、The Rowなど多くのブランドがこのタイプのバッグを発売した。
ユニクロのラウンドミニショルダーバッグは、今、ミレニアル世代が欲しい「It Bag(イット・バッグ)」(シャネル、エルメス、フェンディなどの高価なデザイナーハンドバッグの定番でベストセラーになっているカバンの総称)とも称されている。これは「quiet luxury(クワイエットラグジュアリー)」というトレンドが関係しているのではないだろうか。
「静かな高級品」と直訳されるこのトレンドは、ブランドアピールを控えめにした高級品という意味で、ロゴマークのないハイブランド品を指す。「品質」と「実用性」に重点を置き、価格やステータスを重視する考え方とは対極に位置する。
ラウンドミニショルダーバッグも、見た目以上にたくさん入り、軽くて持ち運びやすい。半円形の形は体にフィットしやすく、スマートな見た目で色も選べて、手に取りやすい価格ときている。「令和のバーキン」とも呼ばれる所以である。
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