“パクリ疑惑”続出のSHEINを、なぜ日本の若者は支持するの? ユニクロが訴訟を起こした根本的理由:磯部孝のアパレル最前線(5/7 ページ)
ユニクロは1月16日、模倣商品の販売停止などを求めて、SHEINブランドを展開する3社を提訴したと発表した。パクリ騒動が後を絶たないSHEINはなぜ、若者に支持され続けているのか。
模倣商品を買う消費者側の問題点
SHEINはECサイトと公式アプリに加えて、X (旧Twitter)、Instagram、LINE、YouTube、Snapchat、TikTokなどの各プラットフォームを通じて積極的に情報を発信。Instagramのフォロワー数(1月30日時点)は公式アカウントが3161万人で、日々さまざまなスタイリングが写真や動画で紹介されている。
20年12月からは日本語サービスの提供を開始し、Instagramの日本版公式アカウントのフォロワー数(1月30日時点)は73.6万人にのぼる。先にも述べたようにECサイトやSNSに特化して情報発信していることから、日本でもミレニアム世代を中心に多くの支持を集めている。
ミレニアム世代は雑多なコンテンツを見ながら気になったものをタップする習慣ができており、特に目的がなくても投稿を流し見して楽しむ。「ググる→販売サイトへ」というのは、ひと昔前のやり方なのだ。今はSNSが主流で、例えば「Instagramのリール投稿を見ながらダイレクトに販売サイトへ」という流れが増えてきている。
米国ではこうしたSNSの影響により、深刻な社会問題が起きているとの指摘がある。米ピュー・リサーチ・センターの世論調査によると、TikTokで定期的にニュースを見る人の割合は14%。18〜29歳の若者では32%に跳ね上がる。誤解や誇張も入り交じる若者中心の発信が、国民の実感を左右する「ティックトック・エコノミクス」に、無視できないほど大きな影響を与えているのだ。
大きな影響力を持ち、発信者側でもある若者たち。彼・彼女らの多くは、社会的な倫理観を日々の生活から身に付けていく(残念ながら教育からではない)。そうした中で、ガバナンスやコンプライアンス、ましてや商標、意匠侵害、模倣商品に対する意識が低いままであれば、模倣商品を気にすることなく買い続けたり、情報発信したりするかもしれない。
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