“パクリ疑惑”続出のSHEINを、なぜ日本の若者は支持するの? ユニクロが訴訟を起こした根本的理由:磯部孝のアパレル最前線(6/7 ページ)
ユニクロは1月16日、模倣商品の販売停止などを求めて、SHEINブランドを展開する3社を提訴したと発表した。パクリ騒動が後を絶たないSHEINはなぜ、若者に支持され続けているのか。
今回のユニクロの件は「パクリ」と言える?
ラウンドミニショルダーバッグを模倣したとされる商品の販売が、不正競争防止法に違反するかどうかは幾つかのポイントから判断されるだろう。過去の判例を見ると、「周知商品表示性(他人の商品等表示※1として需要者の間に広く認識されているもの)」「技術的機能に由来する形態(軽さ、しわになりにくさなどの機能を達成するための形態)」といった視点から争われることになりそうだ。
※1:人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器もしくは包装その他の商品または営業を表示するもの
過去にレディースのミリタリーパーカの形態模倣(他人が作成した商品の形態を模倣し、その商品を譲渡したり貸し渡したりすること)について、 争った判例を見てみよう。このケースでは、フードの立体感や生地の質感に若干の違いがあった。しかし、それは一般消費者が「異なる商品である」とすぐ認識できるほどの違いではないと判断。形態模倣であるとして損害賠償請求を認めた。
形態模倣であると判断されるには、模倣商品がオリジナル商品に依拠して作成されたものであると証明することが必要だ。上述のミリタリーパーカについては、フードや襟、袖といった多くの部分が、偶然に一致することは考えがたいと判断された。 一方で、「商品の機能を確保するために不可欠な形態」や「ありふれた形態」であると判断された場合は、形態模倣とは認められない。つまり、パクリとは言えないのだ。
なかなか商品が売れない現代のアパレル業界では、売れた商品の分析・情報収集が高い精度で行われ、その特徴やヒットの要因が徹底的に研究されてしまう。固定ファンがいる店には顧客がリピーターとして足を運ぶが、明確なファン作りができていない店は、売れている商品とよく似たアイテムを店頭に並べて集客するしか方法がないからだ。
その結果、人気商品とよく似たアイテムが店頭に並び、異なるブランドの店舗であるにも関わらず、どこも同じように見えるという悪影響まで生まれている。
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