ファミマの「服」は実際どうなのか ユニクロやワークマンと比較して見えた“矛盾点”:磯部孝のアパレル最前線(3/5 ページ)
コンビニでアパレル商品が売れている。ファミリーマートが展開する「コンビエンスウェア」や、ローソンが人気セレクトショップとコラボした「インスタントニット」は軒並み人気商品となった。なぜ、コンビニで扱われるアパレル商品がこれほど人気なのだろうか。
ファミリーマートの「服」、比較してみた
ではここで、コンビニエンスウェアで展開している代表的なアパレル2点を、アパレル専門チェーン店で取り扱っている類似商品と比較してみよう(図表1〜2)。
ラインソックスがブレークした当時は、am/pmカラーやアーガイルなど、カラーやデザインにもっとバリエーションがあった。しかし、記事を執筆している2月時点ではカラーやデザインがかなり絞り込まれ、選ぶ楽しさが感じられない商品展開となっている。価格もとびぬけて安いといったことはなく、サイズ展開にも特筆すべき点は見られない。つまり、アパレル専門チェーンと比較して、コンビニエンスウェアが勝っているのは店舗数だけ、というのが正直なところだ。
これまでコンビニで販売されていたアパレルは、「雨に濡れた」「外出先で忘れた」といった緊急需要に対応したものだった。コンビニエンスウェアは、こうした緊急需要以外を獲得するため、立ち上がったブランドである。にもかかわらず、店舗数、つまり生活者に一番近いという点だけしか勝っていないとしたら、コンビニエンスウェアはいつの間にか緊急需要にしか対応できていないという皮肉な結果になってしまっている。
もちろん、店舗数が飛び抜けて多いのは、アパレルにとっても大いに魅力に感じる点だ。今回、仮定在庫枚数として、全店舗に展開した場合の、SKU(Stock Keeping Unit:ストック・キーピング・ユニットの略、受注・発注や在庫管理を行うときの、最小の管理単位)当たり1枚ずつ均等に展開した数を仮定し、算出した。1デザイン当たりの生産数がまとまれば、仕入れ価格や品質、納期についても主導権を得られる。しかし、それと同時に、売る側にとっては売れ残りリスクが高まる側面もある。
そのため、コンビニエンスウェアも発売当初は、大阪エリアの150店舗、関西地区2700店舗での試売を経て、全国展開に踏み切っている。ローソンのインスタントニットでも、店舗を絞り込んで展開しているのは、賢明な対応だ。
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