99%が受講完了 サイバーエージェント式「学び直しに関心が低い社員」を巻き込む方法:生成AIリスキリング(2/3 ページ)
99.6%にあたる社員・全役員がリスキリングの受講を完了――これはサイバーエージェントが達成した、社員の学び直しの取り組みだ。学び直しへの関心が高まる一方、全社的にプログラムを軌道に乗せるのは簡単ではない。同社はいかにして、リスキリングプログラムを構築し、社内に浸透させていったのか。
わずか4カ月で準備 なぜできた?
このリスキリングプランが社内で提案されたのは、プログラムのスタート4カ月前の23年7月。サイバーエージェントでは「あした会議」と呼ばれる会議を年に1〜2回開催している。新規事業や課題解決の方法について、社員や役員がチームを組み、藤田晋社長に直接提案する場だ。
エンジニアらが中心となって実施する技術者版「あした会議」において、同社子会社のAI Shift(東京都渋谷区)で、データサイエンスチームのマネージャーを務める友松祐太さんのチームが、役員も含めた社員全員が受講する「生成AI徹底理解リスキリング」を提案した。同案は全8チーム16案の中で、最も高い点数を獲得し、実施が決まった。
提案からわずか4カ月間で教材を作成し、実行に移すというスピード感はどのようにして醸成されたのか。
友松さんは「所属するAI Shiftの部署の中で、すでにメンバー向けに生成AIの勉強会に取り組んでいた背景があり、全社展開するための材料がそろっていた」と話す。提案段階で講師陣もあらかじめ選定し、講師依頼もスムーズに進んだ。あした会議で実施が決まった施策を推進・サポートする社内の仕組みもあるといい、友松さんは動画教材などのコンテンツ作成に集中的に取り組むことができたという。
社内周知はいかに進めたのか
「生成AI徹底理解リスキリング for Everyone」は、全社員が生成AIによる業務効率化や新規事業の着想を得られる状態を目指すプログラムだ。教材の準備ができた次の段階は、いかにして6000人を超える全社員に受講してもらうかだ。
小枝さんは「あの手この手を使って周知に取り組んだ」と振り返る。まずは社内チャットツールのSlackとメールで、リスキリングプログラムが始まることを告知。スタート後は社内デザイナーらと連携して作った「全社員必修」と記されたサイネージを社内展開した。各部署の会議にも顔を出し、リスキリングを受講してもらうよう何度も共有したという。
1回目の動画教材を公開した最初の2週間は、動画の視聴率が10%に満たず「全社員が受講」という温度感は浸透していなかったという。そこで、小枝さんと友松さんは以下のような取り組みを実施した。
- 各役員管轄のキーパーソンを巻き込んだSlackのChannelを作成
- 役員会で、各役員の受講状況や役員管轄ごとの受講状況の推移を毎週報告
- リスキリングを受講するコアタイムを各部署で設置の依頼……など
こうした受講を促す取り組みが奏功。各役員管轄の進捗が日ごとに可視化され、受講率が順調に伸びていったという。
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