祖業復活か、二の舞か イトーヨーカ堂×アダストリアの新ブランドをプロはどう見る?:磯部孝のアパレル最前線(3/7 ページ)
セブン&アイ・ホールディングス傘下のイトーヨーカ堂が、肌着などの一部を除いて衣料品事業から撤退し、食料品を中心に展開していく方針を示したのが2023年3月のこと。そのわずか1年後の今年2月、アダストリアと手を組んだライフスタイルブランド「FOUND GOOD」をスタートした。
なぜアダストリアを選んだのか
今回、イトーヨーカ堂が衣料品事業を起死回生させる相棒として選んだのがアダストリアだ。アダストリアは30〜40代女性から高い支持があるブランドを複数持ったアパレル小売り企業。1953年に設立した「福田屋洋服店」から始まり、1982年にジーンズカジュアルショップ「ポイント」を開業。1984年からポイントのチェーン展開を開始した。
1992年に立ち上げた「ローリーズファーム」は、当時のレディースファッションのトレンドだったナチュラルテイストを代表するブランドに成長。「森ガール」と呼ばれる若い女性たちからの絶大な支持と、郊外型のショッピングセンター開業ラッシュに便乗する形で、企業規模を拡大していった。現在は、「GLOBAL WORK」「PAGEBOY」といったアパレルをはじめ、雑貨、家具、カフェなど30以上のカジュアルファッションブランドを展開。2024年2月期のグループ連結売上高は2755億円だった。
なぜ、イトーヨーカ堂はアダストリアを相棒に選んだのか。背景には、イトーヨーカ堂が抱える課題がある。
現在のイトーヨーカ堂の顧客構成比は、1位50代(25.7%)、2位60代(22.7%)、3位40代(19.9%)、4位70代(18.9%)、5位30代(9.0%)。高齢層が多い一方、30〜40代のファミリー層が少ないという課題がある。そこで、30〜40代女性から支持されているブランドを複数持ったアダストリアのノウハウを取り込み、イトーヨーカ堂の衣料品売場を改革。集客につなげる狙いのようだ。
一方、アダストリアは中期経営計画の数値目標として、2026年2月期のグループ連結売上高3100億円を目指している。この売上高を達成するために4つの成長戦略を掲げており、その1つが新規事業戦略である。
アダストリアの新規事業戦略は、大きく分けて飲食事業とBtoB事業の2つ。BtoB事業では、同社が持つノウハウやアセットを他企業へ提供する。本来のメーカーとして商品を作り売っていくというビジネススキームではない、アダストリアにとっては新しい商流であり、今回のイトーヨーカ堂との取り組みもBtoB事業に含まれる。
実はアダウトリアはイトーヨーカドー以外でも、広島・九州を中心に展開しているイズミと協業し、「SHUCA(シュカ)」というブランドをプロデュース。2022年秋から売場展開している実績がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
“パクリ疑惑”続出のSHEINを、なぜ日本の若者は支持するの? ユニクロが訴訟を起こした根本的理由
ユニクロは1月16日、模倣商品の販売停止などを求めて、SHEINブランドを展開する3社を提訴したと発表した。パクリ騒動が後を絶たないSHEINはなぜ、若者に支持され続けているのか。
三陽商会「バーバリーショック」から復活? 7期ぶり黒字の裏側
三陽商会の2023年2月期連結業績は、売上高が582億円(会計基準変更前の前期は386億円)、営業損益が22億円の黒字(同10億円の赤字)、純損益が21億円の黒字(同6億6100万円の黒字)となった。本業のもうけ=営業損益が黒字になるのは7期ぶりで、「バーバリー」のライセンス事業を失って以来初となる。
ファミマの「服」は実際どうなのか ユニクロやワークマンと比較して見えた“矛盾点”
コンビニでアパレル商品が売れている。ファミリーマートが展開する「コンビエンスウェア」や、ローソンが人気セレクトショップとコラボした「インスタントニット」は軒並み人気商品となった。なぜ、コンビニで扱われるアパレル商品がこれほど人気なのだろうか。
売上高1000億円は達成できるのか アパレル業界の新星「TOKYO BASE」への懸念
おしゃれ好きな若者をターゲットにアパレルショップを展開するTOKYO BASE。創業から16年で売上高191億円の企業に成長した。寡占化が進むアパレル業界の中にあって、最速で売上高1000億円を目指すという同社の歩みとこれからについて考えてみた。
ワークマンの「おしゃれシフト」は成功するのか アパレル専門家が指摘する新業態への懸念
昨今、これまでの作業ウェアから一般向けの商品を拡大しているワークマン。ファッション性を重視した新業態「ワークマン カラーズ」も発表した。一方で、アパレル専門家はワークマンの「おしゃれシフト」へ懸念を示す。


