中堅は「給料減」 相次ぐ大手企業の「初任給アップ」の背景にある悲しい事情(2/2 ページ)
初任給アップの波が急速に拡大していることが分かります。大手企業で相次ぐ初任給アップの波は、本当に“いいことばかり”なのでしょうか?
企業規模、地域による「採用格差」も深刻化
企業規模別でみても、中小企業と比較すると1000人以上の大企業の方が賃金水準としては高い金額になっていて、初任給も高くなる傾向があります。また、地域別でみても東京、神奈川、大阪といったいわゆる首都圏の企業の賃金水準が高くなっており、首都圏の企業の初任給が高くなるのは必然とも言えます。
結果的に大企業や首都圏の会社に人材が集まってしまい、中小企業や地方の企業は優秀な人材の確保が難しく、新卒の確保がさらに困難な状況になっていると言えます。
労働政策研究・研修機構の「2023年度版労働力需給の推計」によると、労働力人口は2022年の6902万人から2040年には最大で6002万人まで減少が見込まれるとしています。また、15〜29歳においては2022年の1152万人から2040年には1031万人に減少することが見込まれてます。
外国人労働者においては、2024年1月26日の厚生労働省の発表によると約200万人で過去最高となっています。しかし近年の円安の影響もあり、外国人労働者数が日本から離れているというニュースも最近はよく目にします。
労働力人口の減少や高齢者の増加を考えれば、若手社員の獲得が今後ますます困難になることは容易に想像することができ、初任給アップの波もしばらくの間続くのではないでしょうか。
最後に、筆者は「働く」ということは本来、自身の持っている能力を使って社会に貢献し、その貢献の価値の対価として報酬を受け取ることだと考えています。しかし、最近は「初任給アップ」という言葉だけが独り歩きしてしまっているように感じます。新卒の方々の労働に対する意識が損得だけにフォーカスされないことを願います。
著者紹介:武田 正行(たけだ・まさゆき)
1978年東京生まれ。A型。2008年10月に大槻経営労務管理事務所入所。
2001年3月に大学を卒業し、民間の会社に就職をするが、その年に退職する。その後2002年4月から自動車整備の専門学校に入学し、2級ガソリン自動車整備士、2級ジーゼル自動車ガソリン整備士資格を取得、2004年3月に卒業。
2004年4月から2008年9月までハーレーダビットソンのディーラーで整備士として勤務していた。
2013年9月より、海外進出プロジェクトのメンバーとして、アジアを中心とした海外進出に必要な労務管理、社会保険についてのアドバイスを行っている。
現在は約20,000名の企業様の社会保険手続きや数万の企業の相談顧問を行っている。また、ハラスメント・コンプライアンス外部相談窓口のリーダーとして相談員の業務も行っている。
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