2015年7月27日以前の記事
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なぜ日本の組織は「学び合わない」のか リスキリングを成功させる「コミュニティ・ラーニング」とは?(2/3 ページ)

今、社員のリスキリングについて取り組む企業の中で、学び合い続ける組織をいかにつくれるかが重要課題として改めて議論されている。それぞれのキャリアに合わせて選択的・自律的な学習をいかに促進しても、多くの企業で「笛吹けども踊らず」状態が続いている。いくら研修プログラムの改定を続けても、学び続ける組織を開発できなくては、いつまでたっても一部の従業員のための施策にしかならない。

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なぜ「学び合わない組織」に?

 すでに紹介してきたものも含め、調査からのファインディングをまとめれば、日本企業の多くで「学び合わない組織」が定着しているゆえんは、そもそもの研修訓練の欠落、学習への自主性の欠落、学習の共有の欠落、上司による率先垂範の欠落、他者との協働的な学び「コミュニティ・ラーニング」の欠落、学習相談の欠落、学び方・スキル・キャリアの自己認識の欠落だ。こうしたさまざまな機能不全によって、日本中で「学ばない組織」が当たり前のものになり、維持されてしまっている。


図3:学び合わない組織が定着するプロセス(出所:パーソル総合研究所「学び合う組織に関する定量調査」)

図4:学び合う組織の全体モデル(出所:パーソル総合研究所「学び合う組織に関する定量調査」)

他者と学びあう「コミュニティ・ラーニング」の可能性

 そうした状況を打破するために調査で示されているのは、集合的・共同的な学びの経験「コミュニティ・ラーニング」である。グループワークや事例共有会、課題解決型のプログラムやキャリアイベントなど、多様な「他者」と行う学びこそが、学ばない状況に対して変革の可能性を有している。エビデンスをいくつか紹介しよう。

 まず、さきほど挙げたようなコミュニティ・ラーニングを一つでも経験している従業員は、本人の学習意欲が低い場合でも高い場合でも、月の学習時間が2倍以上になっている。1人ではなく人と学ぶことによって学ぶ時間をより多く捻出していることが分かる。


図5:コミュニティ・ラーニングの有無と学習時間[月](出所:筆者作成)

 そのメカニズムをさらにひもとけば、他者との協働的な学びであるコミュニティ・ラーニングの経験は、学習スタイルなどについて認識する「学び方の自己認識」、自身のキャリアやキャリアパスなどについて認識する「キャリアの自己認識」、興味・関心やスキルなどを自己理解・評価する「スキルの自己認識」などの「学びの自己認識」の高まりにつながっていることが分かった。さらに、学びについて他者と相談する経験も同様に、自己認識を促進していた。

 つまり、ビジネスパーソンは、学びについての「他者との触れ合い」を経由して、自らの学びに関する「学び方」「キャリア」「スキル」の自己理解を進めているということだ。他者との学びや学びの相談経験は、リーダーシップ経験や組織俯瞰経験、新規提案経験と比較しても、学びの自己認識に対して最も強くプラスの影響が見られている。


図6:学びの自己認識とコミュニティ・ラーニング経験の関係(出所:パーソル総合研究所「学び合う組織に関する定量調査」)

 筆者は、これまでも著作『リスキリングは経営課題』(光文社)やその他メディア・講演などを通じて、「他者」を通じて学ぶことの重要性を示してきたが、こうした結果は、他者との触れ合いが学びにもたらすメカニズムをより詳細なレベルで示唆するものである。他者を巻き込む学びの重要性は、強調されてもされすぎることがない。

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