海外売上比率7割の「ぺんてる」に聞く、ボールペン「エナージェル」が14億本も売れた秘密(2/5 ページ)
縮小・停滞が続く国内文房具市場とは対象的に、輸出額は拡大傾向だ。1953年に海外進出した「ぺんてる」は、国内大手文具メーカーのなかでも海外売上比率が高く、2023年度で7割を超える。なぜ日本の文房具が反響を得ているのか。
主力製品はボールペン「エナージェル」
ぺんてるは1946年に創業、その7年後の1953年に海外進出した。積極的にグローバルのネットワークを広げ、現在は20の販売会社と5工場を拠点に、120以上の国と地域で製品を販売している。
グローバルにおける主力製品は、2001年に発売された速乾ゲルインキボールペン「エナージェル」だ(日本での希望小売価格253円)。なめらかな書き心地、速乾性、インクの鮮やかさをウリにした商品で、全12色を5段階のボール径(線の太さ)で展開している。
同製品は、高発色の着色剤を配合したり、潤滑剤を従来のゲルインキの3倍使用したり(ボール径0.5、0.7において)、エナージェルインキの特徴を最大限生かす専用チップを開発したりして、なめらかさや発色の良さを追求している。
末岡氏いわく「海外では左利きの人が多い」そうで、左利きの人でも手がインクで汚れづらく、筆記体などでサインをする際にスラスラ書けるといった口コミが広まり、徐々に人気が拡大。2024年7月末時点での全世界累計販売本数は約14億本に達している。
「そもそもゲルインキ(ゲルインク)ボールペンは日本で誕生して、それがグローバルに広がった歴史があります。各メーカーが早期からゲルインキを研究開発しているため世界的に技術力が高く、日系企業の製品が今でも主流だと思います」
調べてみると、サクラクレパスが1984年に世界で初めて実用化した水性ゲルインキボールペン「ボールサイン」を開発。その後、競合他社からも工夫を凝らしたゲルインキボールペンが発売され、市場が拡大していったようだ。
機能性の高さに加え、ぺんてるが各国で進める地道な販促活動も売り上げ増に貢献している。
「現地の販売会社や代理店と協力して、現地の人の目線でターゲットを見極めて販促活動を実施しています。例えば、エナージェルは学生からビジネスパーソンまでの幅広い層がターゲットです。米国では各州の大学で1人ずつアンバサダーを見つけて、その方に商品をサンプリングして大学内への普及を推進しています」
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