海外売上比率7割の「ぺんてる」に聞く、ボールペン「エナージェル」が14億本も売れた秘密(3/5 ページ)
縮小・停滞が続く国内文房具市場とは対象的に、輸出額は拡大傾向だ。1953年に海外進出した「ぺんてる」は、国内大手文具メーカーのなかでも海外売上比率が高く、2023年度で7割を超える。なぜ日本の文房具が反響を得ているのか。
人気上昇中の「アート」向け製品
近年は、アートや装飾に適したペン製品もグローバルでの売り上げ増に貢献しているという。
「欧米などでモダンカリグラフィーや日記などの装飾が流行していて、女性層から表現性が高いペン製品の人気が高まっています」
モダンカリグラフィーとは、文字を美しく手書きする「カリグラフィー」を、より個性豊かで自由に表現したものを指す。
売れ筋の1つが、1963年に誕生したロングセラーのサインペンに筆のタッチ感をプラスした「筆touch サインペン」(日本での希望小売価格は1本165円、または220円)だ。ペン先に強弱をつけることで線の太さを調整できる点や36色の多色展開が、まさにアートや装飾に最適なのだという。
2023年8月に発売した新開発のマットカラーボールペン「マットホップ」(同220円)も、グローバルで好調だ。ぺんてるの独自技術を用いて光沢感のないマットな筆跡と濃く鮮やかな発色を実現。写真やマスキングテープなどの上に書いても、ハッキリと色が映える。
日本でも写真のデコレーションなどの用途で若年女性から人気を得ており、「文房具屋さん大賞2024」で大賞を受賞。SNSでの投稿も盛んで、そうした日本での反響が海外にも波及してグローバルで人気が上昇しているそうだ。
アート向け製品の好調は、ぺんてる以外の文具メーカーでも見られている。例えば、三菱鉛筆のロングセラー商品「ポスカ」は、アート作品との相性の良さで欧州を中心に売り上げを伸ばしている。
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