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米Amazon、Googleも出社回帰 なぜ、わざわざ脱リモートするのか?河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/3 ページ)

米Amazonがリモート勤務を原則廃止し、週5日出社に戻すと報道された。なぜ、リモートワークもできる世界的なIT企業がリアル出社に回帰しているのか。チームの生産性を向上させるには、どうしたらいいのだろうか。

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自分をさらけ出し、チームの力を信じよ

 どんなモーレツ社員であれ、どんなに能力の高い人であれ、「ただの人」です。健康問題や家族問題に直面することもあれば、失敗をしたり、壁にぶつかったりすることだってあります。

 しかし、会社とは「com・pan・y」 。語源は共にパンを食べる仲間、すなわち「チーム」です。

 「仕事人としての私」だけではなく「ただの私」をさらけ出すことで潜在能力がMAXに引き出され、協調行動が促進されます。

 互いに分かり合い、言いたいことを言い、互いを知り、共同体(=職場)で居場所を得ることができれば「1+1=3、4、5……」と、チームの生産性を高める可能性が、上述の調査で示唆されたのです。

 それは「会社を離れても個人的に付き合う」ということでも、「同じ趣味を持つ」ということでも、「雑談をしろ」ということでもありません。「仕事」はあくまでも人生の一部に過ぎないという当たり前のことを理解し、人は誰しも弱い側面を持ち、愚かな振る舞いをすることがあるという当たり前の事実を受け入れることです。


画像提供:ゲッティイメージズ

 実際、PAでは「同じチームに所属する社員(チームメイト)は、社外でも親しく付き合っているか」「彼らはどれくらいの頻度で一緒に食事をしているか」「彼らの学歴に共通性はあるか」「彼らは同じ趣味を持っているか」などといった“親密性”と生産性の関わりを確認したものの、そこに相関性は認められませんでした。

 あなたの職場は、PAの名前のもとにもなったアリストテレスの格言“The whole is greater than the sum of its parts(直訳:全体は部分の総和に勝る).”を信じ、チームをつくれていますか。

 そして、あなたの仕事はAIに任せるだけで終わる仕事ですか? 出社かリモートかという「働き方」ばかりが注目されていますが、その基にある「自分の仕事」と向き合うことで、チームと共に働く大切さが見えてくるかもしれません。

河合薫氏のプロフィール:

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 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。

 研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)、『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか - 中年以降のキャリア論 -』(ワニブックスPLUS新書)がある。

2024年1月11日、新刊『働かないニッポン』発売。


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