「Aさんの意見は?」「いやー……」 上司の“自己満ファシリテーション”3つの特徴はこれだ:「キレイごとナシ」のマネジメント論(6/6 ページ)
部下たちの表情からは、「早く終わってほしい」「時間がもったいない」と言いたげな印象を受けるのに、上司は気付いていないようだった。
アイデアを「収束」させる際の重要ポイント
発散させたアイデアは、適切に収束させなければならない。
「今日もらった意見を、こちらで精査して、いろいろと対策を練っていきたい」
このような発言はファシリテーターの信頼に関わる。意志決定から逃げている、と思われても仕方がない。キチンと決着をつけないと、もう二度とメンバーたちは自分の意見やアイデアを出そうとは思わないだろう。
収束させない、ということは、野球の練習だけさせておいて、試合には出さないのと同じだ。とはいえ、結論ありきの収束は避けるべきだ。では、どのように収束させたらいいのか? ファシリテーターは以下の3つのポイントを意識しよう。
1. 評価基準を明確にする
収束するためには「仕分け」をしなければならない。何らかの基準に照らし合わせて、「これは○」「これは△」「これは×」といった感じで、出てきた意見やアイデアを一つ一つ評価していくのだ。先述した通り、ファシリテーターや一定のメンバーの意向で、「やはり、これで決まりですね」と、評価せずに結論を導いてはいけない。
そのためには「実現可能か?」「費用対効果はあるか?」「どれほど時間を要するか?」といった具体的な評価基準を設けよう。この基準に沿って、出されたアイデアを仕分けしていく。基準があいまいだと、感情的な判断に偏りがちになる。絶対にやめたい。
2. 段階的に絞り込む
次に重要なことは、段階的に収束させることだ。
いきなり1つの案に絞るのではなく、まず「有望な案」を3〜4つに絞る。その上で、それぞれの案を先述した評価基準にもう一度照らし合わせたり、メリット・デメリットを検討するのだ。この過程で、複数の案を組み合わせた新しいアイデアが生まれることもあるので、じっくりとやっていこう。
3. 全員の合意を得る
最終的な結論に至る前に、「この方向性でよいか」を全員に確認する。このときに大事なことが心理的安全性だ。集団による不合理な意思決定(グループシンク)に陥らないように、ファシリテーターは配慮しよう。
社長や部長といった権威性のある人に忖度(そんたく)するような空気を作らない、ということだ。
反対意見があれば、その理由を丁寧に聞き、必要に応じて修正を加える。この合意形成が正しくないと、実行段階で支障が出る可能性が高い。
単なる「司会者」ではない
ファシリテーションは単なる会議進行の「司会者」ではない。組織を動かすための重要な機能である。「発散」と「収束」それぞれのスキルを高め、メンバー全員が活発に意見を出せる環境を作ることが必要だ。
よいファシリテーターがいることで、より良い議論が生まれ、組織の成長にもつながっていくのだから。
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