「決めるのが怖い」と悩む管理職へ 今すぐ「決断力」を高めるために押さえるべき3つの視点:問いの設定力(1/3 ページ)
本当にこの決断で大丈夫だろうか……。予測が困難なビジネス社会において、「決めること」に恐怖心を抱いている管理職の方も多いのではないでしょうか?本記事では決断力を磨く3つの視点、意思決定における重要な考え方ついて詳しく解説します。
著者プロフィール:鳥潟幸志(とりがた・こうじ)
GLOBIS 学び放題 事業リーダー/グロービス経営大学院教員
本当にこの決断で大丈夫だろうか……。
予測が困難なビジネス社会において、「決めること」に恐怖心を抱いている管理職の方も多いのではないでしょうか?
「決めることに対する不安は、適切な視点を持ち、適切な検討プロセスを経れば、解消されていきます」と話すのは、ビジネススクールの運営などを手がけるグロービスで、動画学習サービス「GLOBIS 学び放題」の事業リーダーを務める鳥潟幸志氏。
本記事では鳥潟氏の著書『AIが答えを出せない 問いの設定力』をもとに、決断力を磨く3つの視点、意思決定における重要な考え方ついて詳しく解説します。
連載「問いの設定力」
第1回:AIには答えられない「問い」がある――社会人が磨くべき「3つの能力」とは?
第2回:上司と部下の会話、なぜかみ合わない? “残念パターン”から探るコミュニケーションの深め方
第3回:「決めるのが怖い」と悩む管理職へ 今すぐ「決断力」を高めるために押さえるべき3つの視点
第4回「管理職じゃないし……」視座が低い部下 リーダーシップを育む3つのポイント
決める力を高める 押さえるべき「モノの見方3原則」
決めることは怖いこと――。
このように感じている管理職の方は多いのではないでしょうか? かくいう私も、その一人でした。
ある事業の担当役員を務めていたときのことです。ビジネス環境の変化に伴い戦略の見直しを迫られ、戦略方針について参加メンバーと議論を重ねていました。最終的には私が決めるべき状況になったのですが、その場で判断できずにいました。
なぜ決められなかったのか。少々情けない話ですが、私の中には決めることへの不安がありました。そこで改めて不安に向き合い、その要素を洗い出して見ると、(1)見えていない(考えきれていない)ことへの不安、(2)決めた後に起きることへの不安、(3)決める軸がぶれている自分への不安――の3つに集約することができました。
これらの不安は、おそらく誰もが感じるものだと思います。一方で、適切な視点を持ち、適切な検討プロセスを経れば、ある程度は解消できるという実感も持っています。
今回はこれら不安の退治に効果的な、決める力を高める3つの視点をご紹介します。
何かを決めるためには必要なのは、その対象となるモノ(問題や課題)を「多面的」「長期的」「根源的」に捉えることです。3つの視点で見ることを、“型”として習慣化することが有効だと考えています。それぞれ一つずつ見ていきましょう。
決める力を高める視点1:多面的に捉える
同じ問題に向き合っていても、物事を一つの側面から見るのか、複数の側面で見るのかによって、意思決定の方向性は大きく変わってきます。
例えば、あなたが企業の育成担当者だったとします。ある日、人事担当の役員から「自社の育成計画がどうあるべきか考えて提案してほしい」と依頼されました。この時、「育成」という単一の視点だけをいくら深掘りをしても、組織にとって最適な育成計画を提案するのは難しいでしょう。以下の図は一つの参考として事業活動を取り巻く全体像を表していますが、「育成」は事業活動全体のあくまで一部です。
図のような多面的な視点を持つことができれば、「育成計画を考える前提として、自社の経営戦略はどのような方針なのか?」「検討している育成計画は、採用・評価・報酬制度と整合していそうか?」「自社の活動、その活動を支えるスタッフのスキルやマインドはどのようになっているのか?」といった、育成を取り巻く周辺の論点を広く捉えた上での考察、判断が可能になるでしょう。
決める力を高める視点2:長期的な視点で捉える
2つ目は、問題を短期的な視点だけでなく、長期的な視点でも捉えるということです。
例えば、営業組織でよくあるジレンマの一つに、「短期業績を優先するためにイレギュラーで受注をしようとする営業」と「それによって、システム処理ではなく手作業が発生する納品チーム」という状況があります。これは、それぞれの立場による“持っている時間軸の違い”によって発生しています。
短期的・長期的の優先度については、片方が100でもう一方が0ということは少なく、双方のバランスを鑑みて判断をするのが現実的なアプローチです。そして、ここが大切なのですが、長期視点を理解した上で短期を優先するのと、長期視点を全く意識せずに短期を優先するのとでは、その後の行動が大きく異なってくるということです。その逆もしかりです。
決める力を高める視点:根源的に捉える
判断に迷ったり、意見が分かれてジレンマに陥ったりした際に、判断や議論の前提となる目的や狙いに立ち返ることで、意思決定はスムーズに進みます。
先ほどの「多面的」な視点で紹介した、人事担当の役員から自社の育成計画の提案を求められた件でいうと、大切なのは「役員がなぜ、このタイミングで育成計画の依頼をしてきているのか?」ということではないでしょうか。依頼の背景には、役員の問題意識があるはずです。この問題意識やそもそもの目的を明確にしない中で検討に着手しても、良いプランを作成することは難しいでしょう。
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